ARTにおける早産リスク:高血圧性疾患の関与について(Hum Reprod. 2024)

ART後妊娠では、自然妊娠と比較して早産リスクが高いことがわかっていますし、凍結融解胚移植では同様に妊娠高血圧症候群リスクが高いこともわかっています。では、早産と妊娠高血圧症候群の関連があるのでしょうか。こちらを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

妊娠高血圧症候群は新鮮胚移植妊娠における早産リスクには寄与していませんが、凍結融解胚移植妊娠と早産リスクの20.7%と関連しています。

Petersen SH, et al. Hum Reprod. 2024 Dec. doi: 10.1093/humrep/deae261.

デンマーク、ノルウェー、スウェーデンの3カ国における人口ベースのコホート研究です。北欧ARTおよび安全性委員会(CoNARTaS)コホートから、凍結融解胚移植で出生した18,037名、新鮮胚移植で出生した78,300名、自然妊娠で出生した4,426,682名の単胎妊娠を解析しました。主要評価項目は、妊娠37週未満早産としました。対象基準は、出産時の年齢が20歳以上の女性における第1子から第4子までの単胎妊娠とし、ロジスティック回帰分析を用いて、出産年、母親年齢、出産回数、国による調整を行いながら、オッズ比・95%CIを推定いたしました。
結果:
凍結融解胚移植後の早産発生率は6.6%で、自然妊娠の5.0%と比較して29%高いリスクでした(調整オッズ比1.29、95%CI 1.21-1.37)。このリスク上昇の20.7%は妊娠高血圧症候群が原因と推定されました。

新鮮胚移植後の早産発生率は8.1%で、自然妊娠と比べて49%高いリスクでした(調整オッズ比1.49、95%CI 1.45-1.53)。しかし、このリスク上昇と妊娠高血圧症候群との関連は認められませんでした(寄与率0.5%)。
凍結胚移植における妊娠高血圧症候群の関与は、特にterminationによる早産(全早産の38.2%)で顕著でした。生殖補助医療技術(顕微授精、培養期間、移植胚数)の違いによるものではありませんでした。

≪私見≫

早産と妊娠高血圧症候群の関連をfigureでみると、自然妊娠も新鮮胚移植も凍結融解胚移植もほぼ同じような関連がありそうです。
症例数が多いので、第I種の過誤(Type I Error)である可能性も否定できませんが、理論的に考えるとしっくりくる結果となっています。
もっと全早産、自然早産、terminationによる早産、32週未満の早産、28週未満の早産のパターンがわかれるのでは?と思っていましたが微々たる差になっています。

#生殖補助医療
#早産
#妊娠高血圧症候群
#周産期予後
#亀田IVFクリニック幕張

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張