2024年米国生殖医学会(ASRM)での演題紹介1(郵送での精液検査)

2024年米国生殖医学会で発表されていて興味深かった演題についてご紹介します。
Fellow社のMail-in semen analysisつまり郵送での精液検査の発表が目立ちました。
国が大きくて、精液検査を受けるために受診するのも大変なのが理由かと思っていましたが、それ以外の理由もあるようです。また、男性の生殖医療を担当する医師が足りない状況であるのは我が国と同様のようです。
いくつかの演題を紹介したいのですが、タイトルと結論のみご紹介します。

≪研究の紹介≫

1.RANDOMIZED CONTROLLED TRIAL OF HOME SEMEN TESTING FOR PROSPECTIVE FATHERS: SEMEN ANALYSIS RESULTS AND 3-MONTH FOLLOW UP
Daniel R. Greenberg ほか(McGaw Medical Center of Northwestern University)
Fellow Healthの研究者なし
Fertility and Sterility Vol. 122Issue 4 Supplement e68 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.255
タイトル:将来の父親を対象とした自宅での精液検査の無作為化比較試験: 精液検査の結果と3ヵ月のフォローアップ
結論:自宅での精液検査は、父親となる見込みのある男性にとって実施しやすく、結果の解釈も容易でした。さらに、自宅での精液検査は検査終了3ヵ月後に不妊に関連したQOLを有意に改善しました。

2.HOW PATIENTS ARE UTILIZING MAIL-IN SEMEN ANALYSIS TESTING FOR FERTILITY EVALUATION; AN ASSESSMENT OF 3,159 PATIENTS SEEKING CARE ONLINE AND THROUGH UROLOGY, REI, OBGYN, AND WELLNESS PRACTICES
Alisha T Tolaniほか (University of California San Francisco)
Fellow Healthの研究者あり
Fertility and SterilityVol. 122Issue 4 Supplement e140–e141 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.517
タイトル:患者が生殖機能の評価のために郵送での精液検査をどのように利用しているか:オンラインおよび泌尿器科、生殖内分泌不妊診療科、産婦人科、健康増進活動を通じて治療を求める患者3,159人を対象とした評価
結論:生殖内分泌・不妊クリニック(reproductive endocrinology and infertility)で精液検査を受けた患者は、オンラインで受診した患者よりも、より長い期間妊活をしていました。このことは、不妊治療の専門家によるケアを受けることは、多くの患者にとって障壁となっている可能性を示唆しています。郵送による精液検査が様々なクリニックでうまく利用されていることがわかりましたが、興味深いことに、精液検査を実施可能な生殖内分泌・不妊クリニックでも郵送による精液検査が利用されていました。生殖内分泌・不妊の専門医や生殖医療を専門とする泌尿器科医が全国的に不足していること、クリニックで精液検査を受けることが困難であること、妊活期間が1年間になる前に不妊の問題を特定したいという患者の要望を考慮すると、郵送による精液検査は男性不妊を特定し、迅速な治療を促進するための利用しやすい戦略である可能性があります。

3.UTILIZING MAIL-IN SEMEN ANALYSIS TO IMPROVE TIME TO COMPLETION OF THE INFERTILITY WORKUP IN THE UNDERSERVED POPULATION: A RANDOMIZED CONTROL TRIAL
Kimberly Yau ほか(Keck School of Medicine, University of Southern California)
Fellow Healthの研究者なし
Fertility and Sterility Vol. 122 Issue 4 Supplement e33 Published in issue: October, 2024. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.159
タイトル:不妊診療が十分でない集団における不妊検査完了までの時間を改善するための郵送での精液検査の活用:郵送での精液検査実施予定群と、医療機関での精液検査予定群での無作為化比較試験
結論:精液検査は不妊症診療において推奨される項目ですが、対照群(郵送の精液検査を利用しない方、医療機関での精液検査を促された症例)では、研究期間中に精液検査を終了している方がいなかった(0%)ことからわかるように、現在のクリニックでの診療では、精液検査の実施率が非常に低い結果でした。日常診療では、精液検査は不妊検査の最後の項目となることが多く、患者やパートナーは限られた診療時間内に精液検査を実施している不妊治療クリニックに予約を入れる必要があり、必ずしもそれが可能とは限りません。郵送による精液検査は、不妊治療クリニックでの従来の精液分析検査方法に存在する障害を取り除くことができ、十分なサービスを受けていない方が精液検査を完了までの時間を大幅に短縮します。

≪筆者のコメント≫

郵送での精液検査の良さがお分かりでしょうか?次回も4つの演題をご紹介します。DOIをいれましたので、興味のある方はAccessしてみてください。

文責:小宮顕(泌尿器科部長)

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