GnRHaの反復トリガー(J Assist Reprod Genet. 2024)

GnRHアンタゴニスト周期のGnRHaトリガーは、hCGトリガーと比べてOHSSを減らし、卵子成熟を改善すると報告されている反面、空胞症例(EFS)や回収卵子数が低下するなどの報告もされています。
卵子回収に対してポジティブ派
Tannus S, et al. Fertil Steril. 2017;107(6):1323–8.
卵子回収に対してネガティブ派
Humaidan PKS, et al. Curr Opin Obstet Gynecol. 2021;33(3):213–7.
Popovic-Todorovic B, et al. Hum Reprod. 2019;34(10):2027–35.
今回は、初回トリガーの12時間後に反復トリガーした場合の臨床成績をご紹介いたします。

≪ポイント≫

GnRHaアンタゴニスト法の反復トリガーが、空胞が減る/回収卵が著明に増えるという結果を導いたものではないことをご理解いただきたいと思います。
反復トリガーがLHサージのダウンレギュレーションに働き成績を悪化させることはなさそうです。

≪論文紹介≫

Ao Wang, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Nov 2.  doi: 10.1007/s10815-024-03269-5.

Flexible GnRHアンタゴニストプロトコルの反復GnRHaトリガーが臨床転帰を改善するかどうかを評価したレトロスペクティブPSM研究です。20-42歳の中国女性712名を対象としました。735周期をGnRHa単回投与群(n= 238)と反復投与群(n= 497)に分けました。単回GnRHa群ではトリプトレリン0.2mgを投与し、反復GnRHa群では0.2mgを12時間間隔で2回投与しました。主要評価項目は、臨床的妊娠率、生児出生率、良質胚率、受精率としました。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、臨床転帰に影響を及ぼす全ての潜在的因子を同定しました。
結果:
PSM後の各群159周期の解析では、反復投与群がIVF受精率(71.5% vs. 67.7%、P< 0.05)および良質胚率(47.1% vs. 43.7%、P< 0.05)において単一投与群より改善しました。さらに、反復投与群は凍結融解胚移植周期においてより高い臨床的妊娠率(72.6% vs. 53.4%、P< 0.05)および生児出生率(59.7% vs 43.8%、P< 0.05)を認めました。多変量ロジスティック回帰では、単回投与群と臨床的妊娠(OR = 0.382、P< 0.05)および生児出生(OR = 0.518、P< 0.05)に負の相関が示しました。

≪私見≫

自然周期では、LHサージには上昇期(約14時間)、プラトー期(約14時間)、下降期(20時間)の3つの相があり、GnRHaトリガーは上昇期、プラトー期が短くなるのではとされています。卵丘細胞の膨張と減数分裂の再開はLHサージの開始から18時間後に始まり(ヒト卵子のin vivo研究)、卵子成熟を最大化するためにはLH濃度を14~27時間閾値以上に維持する必要がある(アカゲザルの研究)とされています。
今回の報告者らは、反復GnRHaトリガーが LH サージの持続時間を延長することにより成績を改善するのでは?と考察しています。凍結融解胚移植の成績が改善している理由はわからないと記載されていますが、普通に考えると移植胚が良質になっている影響なのではないでしょうか。

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文責:川井清考(院長)

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