子宮内膜脱落膜化不全は不妊患者では多そう(Reprod Med Biol. 2024)

ヒト胚の母体子宮内膜への着床は妊娠成立の重要なポイントとなります。
脱落膜反応は、着床不全、流産、不育症などと関連しているとされています。子宮内膜間質細胞の脱落膜化は絨毛細胞の増殖、遊走、分化を制御することが報告されていて絨毛・胎盤形成の初期段階に寄与していることを示されています。
最近、着床時期の内膜のずれなどに関してはERA検査をはじめとする子宮内膜胚受容能検査などでてきていますが、もう少し後のステージの内膜評価はメジャーではありません。今回、子宮内膜脱落膜化不全患者の不妊患者での割合を検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

子宮内膜脱落膜化不全を有する不妊女性が高い頻度で存在しそうです。ただ、臨床的に、どのように診断すべきか、原因は何か、治療法はどのような方法があるかなど更なる研究が必要そうです。

≪論文紹介≫

Isao Tamura, et al. Reprod Med Biol. 2024 May 16;23(1):e12580. doi: 10.1002/rmb2.12580.

分泌期後半の子宮内膜を分析することで、不妊女性における子宮脱落化不全の発生率と病態を調査しました。
33名の不妊女性から採取した分泌後期(P+10-12)の子宮内膜について、子宮内膜日付診(1病理医+2産婦人科医:Noyes dating criteria)を行いました。子宮内膜日付診が2日以上遅れた場合を、子宮内脱落膜化不全と診断しました。子宮内脱落膜化不全に必須な転写因子(FOXO1、WT1、C/EBPβ)の発現を免疫組織化学的に調べました。
結果:
32名中、20名(62.5%)に子宮内脱落膜化不全が認められました。これらの症例は、子宮内脱落膜化不全のない症例に比べて流産の頻度が高い傾向がありました。3つの転写因子の発現に対して免疫染色で陽性となった細胞の割合は、脱子宮内脱落膜化不全患者では子宮内脱落膜化不全がない患者よりも有意に低くなりました。分泌中期および分泌後期に測定された血清プロゲステロン濃度は、子宮内脱落膜化不全の有無にかかわらず有意差はありませんでした。

≪私見≫

子宮内脱落膜化不全のESCにおけるPRの発現量を知ることは重要ですが、今回は行っていません。理由として、子宮内膜PR発現は増殖後期に最も高く、排卵後の分泌期に徐々に低下し、分泌期後期では非常に低くなることがよく知られていて今回の分泌期1回の内膜組織採取では評価が難しいと判断されたからです。今回の研究では黄体期の血清プロゲステロン濃度は子宮内脱落膜化不全の有無により差がありませんでした。つまり、プロゲステロンが上手く作用しない可能性、もしくは他のキーファクターが存在することを意味するのではないかと思います。不妊治療にかかわっていると、子宮内膜脱落膜下不全を連想する症例に一定数であいますので、今後も注視していきたいテーマと考えています。

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文責:川井清考(院長)

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