妊娠と甲状腺疾患(ACOG Practice Bulletin 2020)
妊娠と甲状腺疾患について記載されたアメリカ産婦人科学会のガイドライン的位置付けのACOG Practice Bulletinの推奨事項をご案内します。
Obstet Gynecol. 2020 Jun;135(6):e261-e274. doi: 10.1097/AOG.0000000000003893.
推奨度A
1. 妊娠中の甲状腺疾患のルーチンスクリーニング
・甲状腺疾患を疑わない妊婦への潜在性甲状腺機能低下症のルーチンスクリーニングと治療は、妊娠中の転帰や子供の神経認知機能の改善につながることは示されていないため、推奨されません。
2. スクリーニング検査の第一選択
・適応があれば、TSH値の測定が第一選択です。
追記:ASRMガイドライン2024ではTSHとfT4を推奨しています。
3. 甲状腺機能低下症の治療
・甲状腺機能低下症の治療を受けている妊婦では、TSH値をモニターし、基準範囲の下限から2.5 mIU/Lの間を目標TSH値として、レボチロキシンの投与量を調整する必要があります。TSHは通常、4~6週間ごとに評価し、薬を調整します。
4. 明らかな甲状腺機能低下症妊婦
・明らかな甲状腺機能低下症の妊婦は、有害リスクを最小限にするために、適切な甲状腺ホルモン補充療法を受けるべきです。
5. 甲状腺機能亢進症の治療
・甲状腺機能亢進症の治療を受けている妊婦では、fT4のレベルをモニターし、fT4が正常妊娠範囲の上限になるように、抗甲状腺剤量を調整する必要があります。
・甲状腺中毒症もある女性では、Tモニターする必要があります。
・明らかな甲状腺機能亢進症の妊婦は、抗甲状腺薬で治療すべきです。
推奨度B
1. 明らかな甲状腺機能亢進症妊婦の治療
・チオアミド系薬剤を用います。薬剤選択は、妊娠期間、前治療に対する反応、甲状腺中毒症がT4優勢かT3優勢かによって決まります。
推奨度C
1. 甲状腺機能検査
・甲状腺疾患既往歴や家族歴、1型糖尿病、甲状腺疾患が臨床的に疑われる女性には、甲状腺機能の検査を行うべきです。
・他の明らかな甲状腺機能亢進症の徴候がない限り、妊娠悪阻の患者には甲状腺機能の測定は推奨されません。
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文責:川井清考(院長)
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