培養期間とLGAとの関連(Fertil Steril. 2024)

在胎不当過大児(Large for gestational age(LGA))は、出生時の体格が在胎期間に比してかなり大きい児をさします。培養期間とLGAとの関連をビッグデータで解析した結果をご紹介いたします。

≪ポイント≫

凍結融解胚移植周期において胚の培養期間(凍結時期)が長くなるほど、LGA児は増えそうです。

≪論文紹介≫

Bruce D Pier, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):814-823. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.002.

受精後2~7日目に凍結保存し、凍結融解胚移植を受けた女性において、胚凍結保存日と単胎LGA児との関係を検討したSARTデータベースと用いたレトロスペクティブコホート研究です。
結果:
2014年から2019年の間に凍結融解胚移植で出生した181,592周期のうち33,030(18.2%)がLGA児でした。凍結保存が2日目(13.7%)から3~7日目(14.4%、15.0%、18.2%、18.5%、18.9%)に行われた場合、LGA児リスクの増加が認められました。対数二項モデルでは、5~7日目に凍結保存を行った場合、2~3日目を合わせた場合に比べてリスクが増加しました(5日目:aRR 1.32、95%CI 1.22-1.44、6日目:aRR 1.34、95%CI 1.23-1.46、7日目:aRR 1.42、95%CI 1.25-1.61)。対数二項モデルにおいてLGAリスクと最も関連した他の因子は、0回と比較して3回以上の早産(aRR 1.82、95%CI 1.24-2.69)および正常体重と比較してBMI 35以上(aRR 1.94、95%CI 1.88-2.01)でした。このモデルでは、経妊数、経分娩数、BMI、卵子数、胚のグレードもLGAと関連していました。アジア人、黒人、ヒスパニック、および太平洋諸島民族は、白人患者と比較してモデルにおいてprotective factorでした。低BMI(<18.5)もまた、正常BMIと比較してprotective factorと考えられました

≪私見≫

培養中の胚のエピジェネティックな変化、培養液の種類、暴露期間、および黄体の有無、外因性エストロゲンとプロゲステロンの使用がLGAと関連しているかもという報告はありますが一定の見解には至っていません。生児出生を増加するためにでてきた新たな解決すべき課題ですが、現在 中長期的な児への有害事象は認めていないため、あまりナーバスになりすぎる事案ではないと感じています。

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文責:川井清考(院長)

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