ジクロフェナクによる排卵遅延(Reprod Biomed Online 2012)

NSAIDSを排卵抑制目的に採卵時に使用することは一般的になってきています。
排卵抑制に国内でジクロフェナクを用いられるようになったきっかけの報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

自然周期採卵でLHサージがでている症例でもジクロフェナク坐剤を用いると排卵後率を減らせそうです。

≪論文紹介≫

Satoshi Kawachiya, et al. Reprod Biomed Online. 2012
Mar;24(3):308-13. doi: 10.1016/j.rbmo.2011.12.002.

自然周期採卵における非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の排卵抑制効果を評価するために行われたレトロスペクティブコホート研究です。2009年から2010年に実施された1865周期の採卵を対象としました。トリガー日にLHサージが検出された排卵リスクの高い周期において、低用量NSAIDS(採卵の8時間前、14時間前にジクロフェナク坐剤)を非ランダムに投与しました。評価項目は、排卵後率、予定周期あたりの胚移植実施率、胚移植あたりの臨床妊娠率および生児出生率としました。
結果:
NSAIDS使用により、排卵後リスクの有意な低下(3.6% vs. 6.8%、aOR 0.24、95%CI 0.15-0.39、P < 0.0001)と、予定周期あたりの胚移植実施率の上昇(46.8%対39.5%、aOR 1.38、95%CI 1.06-1.61、P = 0.012)と関連していました。胚移植あたりの臨床的妊娠率(39.1% vs. 35.9%)および生児出生率(31.3% vs. 31.4%)は同等でした。

≪私見≫

この報告は自然周期採卵の採卵アルゴリズムを合わせてNSAIDSの排卵抑制効果をみている非常に臨床現場に活用できる内容となっています。

トリガー時のLH・P4値 トリガー時間 NSAIDS 採卵日
LH <10 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml
なし トリガー2日後(34時間)
LH 10–30 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml
すぐ  6時間毎 トリガー翌日午後か2日後
LH 30–110 IU/ml
P4 <1.0 ng/ml
すぐ 適宜 トリガー翌日午前
LH 110–10 IU/ml
P4 >1.0 ng/ml
なし なし 検査実施日

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文責:川井清考(院長)

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