FSH測定の意義について(当院のデータをふまえて)
不妊症の一次検査の内分泌検査には血中FSHが含まれています。通常、月経中に血中LH、エストロゲンと共に測ることが多いのですが、なぜ測定をしているかを説明していこうと思います。FSHは排卵障害の鑑別のために用いられることが一般的ですが、加齢とともにFSH基礎値が上昇することがわかっています。若年女性ではFSHは採卵数には影響するものの妊娠成立には関係なく、また卵巣予備能の指標としても血中AMHなどにくらべて適していないことが報告されています。
ただし、FSH値が15mIU/mlより高いと妊娠率が下がるとする報告や、体外受精での研究報告では8-10mIU/mlで卵巣刺激に対する卵巣反応に差がある(採卵数に影響する)というものもあります。当院に来院された患者様の月経中の血中FSH値を年齢別にグラフにいたしました。やはり若く定期的に月経がある女性でもFSHが高い方がいらっしゃいます。当院では何回も測定することはありませんが、初診から3ヶ月以内に、また体外受精のスタート時に測定をさせていただくことが一般的です。
参考程度となりますが、当院ではFSHが10mIU/ml以上の場合は卵巣機能が低下している原因を精査していきます。問診は大事で子宮内膜症や卵巣腫瘍の手術既往や虫垂炎などの手術により腹腔内の卵巣周囲の癒着により血流障害をおこしていそうではないかなど詳細に確認いたします。排卵が早まることがあるため月経周期がみじかくなっている方がいらっしゃいますので月経周期をあらためて確認、月経中の胞状卵胞数やAMHなど複数の方法で卵巣予備能を評価します。また、超音波検査で月経中に卵胞がすでに発育をはじめていないかどうか、排卵時には内膜が十分厚くなっているかなども治療の参考としています。またFSHが3mIU/ml以下の方は血中LH、エストラジオールが共に低くなっていないか、視床下部・下垂体障害をおこすようなイベントがなかったかなどを確認し排卵に必要な治療を選択していきます。
当院で月経中に測定した約1700名の血中FSH値を値をまとめました。みなさんが、どこに当てはまるか参考になさってください。
文責:川井(院長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。