禁欲期間が長いと妊活にはよくないです
≪研究紹介≫
射精間隔(禁欲期間)が妊娠率、生児獲得率、精子DNA断片化に及ぼす影響のシステマティックレビュー
The Influence of Male Ejaculatory Abstinence Time on Pregnancy Rate, Live Birth Rate and DNA Fragmentation: A Systematic Review
Sørensen F, ほか.. J Clin Med. 2023 Mar 13;12(6):2219. doi: 10.3390/jcm12062219. PMID: 36983220.
精液は溜めすぎると良くないです。これは、精子の質にも影響し、さらには妊娠や出生まで影響するのではないかという点で系統的に知見をまとめた論文です。WHOのマニュアルでは、精液検査の際の禁欲期間は2-7日を推奨しています。精子のvitalityとクロマチンは、精巣上体機能が障害されない限り、禁欲期間が長くなっても影響を受けないからなどの理由からだそうです。WHOはこのようなデータを集めて精液検査の基準値を作っています。しかしながらこの禁欲期間が妊娠予後に良いかどうかの判断は難しいのです。
≪研究の要旨≫
このシステマティックレビューの目的は、理想的な射精の禁欲期間について推奨できるような知見を得るために、禁欲期間の長さ(射精の間隔)と、妊娠率、生児獲得率、精子DNA断片化との関連を解析することです。PubMed、Embase、Cochraneのデータベースで適格な研究を検索し、24件の研究がこのシステマティックレビューに利用されました。
カットオフ値はさまざまですが、禁欲期間が長い場合と比較して、短い方が生殖補助医療における妊娠率および生児獲得率の改善することが確認されました。同様に、禁欲期間が短い場合、長い禁欲期間の場合と比較して精子DNA断片化率が低いことが確認されました。対象となった研究が均一でないため、理想的な禁欲期間を設定することはできませんでしたが、すべてのアウトカムが、禁欲期間が短いほど改善していました。
このシステマティックレビューにより、WHOの診断目的での推奨よりも短い禁欲期間の方が、高い妊娠率と生児獲得率、および精子DNA断片化の改善につながることが確認されました。
≪筆者の意見≫
今回の論文の結果はとても簡潔にまとまっていてわかりやすいです。予想通りというか予想以上の結果です。7日間は長いことは確認できました。ICSIなどの生殖補助医療を行なった場合でも、禁欲期間が影響する、つまり射精の間隔が長いと妊娠率が低下するということです。我々の施設では禁欲期間は2-3日とお願いしていますが、やはり妥当だと思います。日本人は性交渉の頻度が低く、当院のデータでも月に4回以下が75.6%、月1回以下が22.2%という結果があり、性交渉が少ない=>禁欲期間が長い=>不妊症、となっているカップルも少なくないと考えられました。
妊活中は、できる範囲で結構ですので、まめな射精をお願いします。
文責:小宮顕(泌尿器科部長)
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