人工授精hCGトリガーまでの日数は成績に影響しない(F S Rep. 2023)

Check JHらは1992年、2003年に排卵までの期間が短いと妊娠率が下がるという報告、女性ホルモンを用いて排卵までの期間を伸ばすと妊娠率が上がる可能性を報告しました。胚移植に関しては排卵周期・ホルモン補充周期凍結融解胚移植のプロゲステロン投与前までの期間に数多くの議論がなされていますが、人工授精での検討は数多くありません。今回、卵巣刺激を用いた人工授精の人工授精までの期間が妊娠成績に及ぼす影響を検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

人工授精において、人工授精実施日までの長さは治療成績に影響しません。
ただし、子宮内膜厚とは特に内服薬を用いた卵巣刺激の場合は関連がありそうです。

≪論文紹介≫

Pardis Hosseinzadeh, et al. F S Rep. 2023 doi: 10.1016/j.xfre.2023.08.003

クエン酸クロミフェン、レトロゾール、またはゴナドトロピンによる人工授精によるhCGトリガーまでの期間が生殖医療成績を評価することを目的とした研究です。生殖医療ネットワーク(Reproductive Medicine Network)による卵巣刺激による多胎妊娠の評価(AMIGOS trial)ランダム化比較試験のコホート解析です。原因不明不妊で卵巣刺激を用いた人工授精を実施したカップル869組2,546周期(人工授精4周期まで)を対象としました。月経1日目からhCGトリガーまでの卵胞期を五分位(q1:11日以下、q2:12日、q3:13日、q4:14-15日、q5:R16以上)で定義されるカテゴリー変数として評価しました。主要評価項目は臨床妊娠、生児出生率、子宮内膜厚としました。
結果:
卵胞期五分位値を低下させても、すべての治療群を合わせた未調整モデルでも、卵巣刺激で層別化した場合でも、臨床妊娠率や出生率は低下しませんでした。全ての卵胞期カテゴリにおいて、クロミフェンクエン酸またはレトロゾールによる治療を受けた女性では、q5群(16日以上)と比較して子宮内膜厚が薄くなりました。ゴナドトロピンによる卵巣刺激を受けた女性においても、同様に観察されたが、その差は卵胞期が12日以下の症例に限られていました。

≪私見≫

Bakkensen JBらが2020年Reprod Biomed Online誌にゴナドトロピンを用いた人工授精の場合は排卵までの期間が8日カットオフで成績を比較した場合、長い方が妊娠率は高くなると報告しています。
内膜厚が影響を与えているのか、統計では差がつかない範囲で複数卵胞発育が影響をあたえているのかは定かではありません。
内膜が薄い人には卵胞期がながくなるような人工授精の取り組みが走行するかもしれませんね。

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文責:川井清考(院長)

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