IVMと通常刺激の累積妊娠継続率の比較検討(Hum Reprod. 2024)

卵巣予備能が高い女性にとってOHSS回避のためIVMの選択肢が以前より検討されています。ただし、調節卵巣刺激と比較して妊娠率が低いこと、プロトコールが定まっていないことから普及に至っていないのが実情です。今回、後方視的ではありますが大規模データの解析結果が報告されましたのでご紹介いたします。

≪ポイント≫

血清AMH 10 ng/mL以上の女性において、IVM1周期は調節卵巣刺激1周期と累積妊娠継続率で非劣性でした。

≪論文紹介≫

L Mostinckx, et al. Hum Reprod. 2024 Jan 4:dead273. doi: 10.1093/humrep/dead273.

18-36歳high-responderの女性に対してIVM vs. GnRHアンタゴニスト法による生殖医療成績を後方視的に行った研究です。2016年1月から2022年6月までの1,707周期を対象としています。
high-responderは血清AMH値≧3.25ng/mLと定義しました。主要評価項目は、胚移植後10~11週に評価した累積妊娠継続率としました。事前に設定した非劣性のカットオフは-10.0%とした。副次評価項目は、妊娠継続となるまでの胚移植周期数としました。
結果:
IVM:463周期を調節卵巣刺激:1,244周期を比較しました。IVM群では調節卵巣刺激群(522/1193、43.8%)と比較して、PCOSと診断された女性が多く(434/463、93.7%)、若く(29.5歳 vs. 30.5歳、P≦0.001)、BMIが高く(25.7 vs. 25.1、P≦0.01)、AMHが高くなりました(11.6ng/ml vs. 5.3ng/ml、P≦0.001)。IVM周期ではより多くの卵丘-卵母細胞複合体(COC)が回収できましたが(24.5個 vs. 15.0個、P≦0.001)、成熟卵子数は両群とも同程度でした(11.9個 vs. 10.6個、P=0.9)。全コホートにおいて、IVM群による非調整累積妊娠継続率は調節卵巣刺激群(794/1,244、63.8%)と比較して有意に低くなりました(198/463、42.8%、P≦0.001)。血清AMH別に層別化すると、累積妊娠継続率は血清AMHの増加とともに収束し、IVMによる妊娠継続率は血清AMH値が10ng/mlを超えた時点から調節卵巣刺激と比較して非劣性となりました(IVM群:113/221、51.1% vs. 調節卵巣刺激群29/48、60.4%)。妊娠継続に必要な胚移植回数は、IVM群、調節卵巣刺激群ともに同じでした(1.6回 vs. 1.5回、P = 0.44)。IVM/調節卵巣刺激、女性年齢、BMI、COC数、PCOSの表現型を調整した多変量回帰分析の結果、血清AMHが10ng/mlを超えるhigh-responderと予測された症例では、COC数が妊娠継続率と関連する唯一の因子となりました。

≪私見≫

この研究ではIVMプロトコールが明記されていて、ピル14-21日内服後の5日目もしくは月経3日目からBMIに応じてHMG150-225単位3日間注射を行い、その後 トリガーなしで42時間後に採卵としています。
国内でもIVMは保険診療内となっていますので、選択肢の一つとして提示されてもよいかもしれません。

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文責:川井清考(院長)

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