妊娠前白血球サブセットは流産と関係ある?(Hum Reprod 2024)

妊娠維持にはTリンパ球、単球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球のバランスが必要だとされています(Bertら、2021; Dingら、2021; Makhseedら、2001; Robsonら、2012; Jayaramら、2018; Ticconiら、2019)。また、白血球のインバランスは、反復流産、妊娠糖尿病、子癇前症との関連も指摘されています(Taylor and Sasser、2017; Ticconiら、2019; Sunら、2020)。
妊娠前の末梢血白血球バランスと流産の関係があるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

妊娠前白血球サブセットは流産と関連がありそうです。
末梢血白血球数、好中球数、単球数は流産リスクと逆相関し、リンパ球は正相関を示しました。

≪論文紹介≫

Youhong Liu., et al. Hum Reprod 2024. doi: 10.1093/humrep/dead261

中国本土の全国無料妊娠前検診プロジェクト(National Free Pre-pregnancy Check-up Project:NFPCP)のデータに基づいたレトロスペクティブ・コホート研究です。
6ヵ月以内に妊娠を計画しているカップルに、妊娠前健康診断と生殖に関するカウンセリングサービスが無料で提供されました。本研究は2016年に妊娠した20~49歳の女性NFPCP参加者1,310,494名を対象としました。追跡不能、多胎妊娠、血液検査未実施の235,456名を除外し1,075,038人を解析に組みこみました。
主要評価項目は妊娠初期流産とし、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて白血球サブセットにおける流産のオッズ比および95%信頼区間を推定し、制限付き三次スプラインを用いて非線形の曝露反応関係を推定しました。
結果:
妊娠中の参加者のうち、35,529例(3.30%)の流産が記録されていました。末梢血白血球が正常である妊婦と比較して、流産に対する白血球減少および白血球増加のOR(95%CI)は、それぞれ1.14(1.09-1.20)および0.74(0.69-0.79)でした。三次スプラインの結果は単調減少傾向を示した(P nonlinear < 0.05)。好中球数とその比率、単球数とその比率についても同様の関係が観察されました。リンパ球比率は流産リスクと正の非線形関係を示した(P nonlinear < 0.05)。好酸球と好塩基球はともにSABリスクと正の関係を示した(好酸球P nonlinear > 0.05、好塩基球P nonlinear < 0.05)。

≪私見≫

妊娠後、末梢白血球、好中球、単球は増加し、リンパ球、好酸球、好塩基球は減少すると報告されています(Pitkin and Witte. JAMA 1979)。 妊娠前の基礎値により流産リスクが予想できるといいですね。綺麗なデータですが、なかなか先行論文がないのが実情です。追試がでてきたら面白いなと感じています。
末梢血白血球と反復流産の引用論文で青木先生、松林先生の論文で、20年近く前の論文が引用されているのも学問のロマンを感じますね。

文責:川井清考(院長)

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