卵巣反応不良群はART妊娠流産と関連する?(Hum Reprod. 2022)

卵巣予備能低下が流産率を関係するかどうかは議論が分かれています。
では、卵巣反応不良群は同年代の正常卵巣反応群と比較してART妊娠流産率が上昇するのでしょうか。37歳以下の女性で検討した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

37歳以下の女性において、卵巣反応不良群はART妊娠流産と関連しなさそうです。

≪論文紹介≫

M W Christensen, et al. Hum Reprod. 2022 Jul 30;37(8):1856-1870. doi: 10.1093/humrep/deac093.

1995年から2014年の期間にデンマークの公立または私立の不妊治療クリニックでART治療を受けた若い女性(37歳以下)の治療周期を対象としました。女性は卵巣予備能の状態により、卵巣反応不良群と正常卵巣反応群の2群に分けられました。卵巣反応不良群2,734周期(胚移植1,874周期:1,213名)、正常卵巣反応群22,573周期(胚移植19,526周期:8,814名)を対象としました。
卵巣反応不良群は、調節卵巣刺激を行い1周期目と2周期目の両方で回収卵子数5個以下と定義しました。正常卵巣反応群は、少なくとも2回の調節卵巣刺激のいずれかで回収卵子数8個以上としました。子宮内膜症・卵巣手術・PCOS・化学療法後などの症例は除外しました。評価対象は22週未満の全流産、生化学妊娠、12週以下の初期流産、12週以降の後期流産としました。
結果:
卵巣反応不良群の全流産リスクは正常卵巣反応群と同等した(調整ハザード比:1.04、95%CI:0.86〜1.26)。流産タイプ別に層別化しても卵巣反応不良群と正常卵巣反応群で差はありませんでした。胚移植1回あたりの臨床妊娠または生児獲得率は、正常卵巣反応群と比較して卵巣反応不良群で低い結果となりました(aOR:それぞれ0.77(0.67〜0.88)および0.78(0.67〜0.90))。

≪私見≫

この報告では30歳以下女性は31-35歳女性に比べて回収卵子数が少ない方が流産率上昇する結果となっています。症例数が少ないために起こっているバイアスなのか、別途理由があるのかは注目すべき点だと考えています。

文責:川井清考(院長)

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