タイムラプス培養は自然妊娠・通常培養と比較して周産期予後はどう?(Hum Reprod. 2023)

タイムラプス培養の臨床上での安全性を評価した前向き研究では、通常培養と比較して、胚発育率、着床率、妊娠継続率、出生率は同等であることが報告されています。今回は、タイムラプス培養は自然妊娠・通常培養と比較して周産期予後がどうなのかを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

主要評価項目であった単胎分娩における早産(37週未満)、低出生体重児(2500g未満)、妊娠高血圧腎症症候群において、タイムラプス培養は通常培養と比較して差を認めませんでした。

≪論文紹介≫

A Ahlström, et al. Hum Reprod. 2023 Oct 25:dead219. doi: 10.1093/humrep/dead219.

スウェーデンのレトロスペクティブレジストリ研究であり、2013年から2018年に実施された新鮮胚移植妊娠の単胎分娩7,379例を対象としています。タイムラプス培養した胚から出生した単胎児の周産期転帰を、通常培養での胚から出生した単胎児および自然妊娠による単胎児71,300例と比較しました。評価項目として、早産(37週未満)、低出生体重児(2500g未満)、妊娠高血圧腎症症候群を検討しました。
9生殖医療施設(タイムラプス培養出生児2,683例、通常培養出生児4,696例)と生まれ年、出産経験、母体年齢をマッチさせた自然妊娠出生児71,300例を比較検討しています。精子および卵子提供周期や着床前診断を行った症例は除外されています。オッズ比および関連交絡因子を調整した調整オッズ比を算出しました。
結果:
調整後解析では、早産(aOR 1.11、95%CI 0.87-1.41)、低出生体重児(aOR 0.86、95%CI 0.66-1.14)、妊娠高血圧腎症(pregnancy hypertension: aOR 0.99、95%CI 0.67-1.45、preeclampsia: aOR 0.98、95%CI 0.62-1.53)にタイムラプス培養と通常培養に差は認めませんでした。早産(aOR 1.31、95%CI 1.08-1.60)、低出生体重児(aOR 1.36、95%CI 1.08-1.72)リスクは、自然妊娠出生児と比較してタイムラプス培養出生児で増加しました。タイムラプス培養では、pregnancy hypertension(aOR 0.72 95%CI 0.53-0.99)リスクは自然妊娠と比較して低くなりましたが、preeclampsia(aOR 0.87 95%CI 0.68-1.12)リスク変化は認められませんでした。はサブグループ解析によると、胚盤胞移植後の方が初期胚移植に比べて有害転帰が多い傾向にありました。

≪私見≫

今回は、新鮮胚移植での検討です。長期培養での有害転機の上昇がタイムラプスインキュベータ環境(例えばドライでの培養環境や培養液の問題など)によって起こりうるのか、新鮮胚移植での内膜のずれにより起こりうるのかは今後も関連報告を評価していく必要があるかと思っています。

文責:川井清考(院長)

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