HRT周期黄体補充前のエストロゲン補充は7日で十分?(Hum Fertil (Camb). 2023)

2014年1月から2020年12月に2,628名4,142周期のHRT周期黄体補充前のエストロゲン補充7日群(1,406周期)と14日群(2,716周期)をレトロスペクティブに検討し、関連因子で調整後した結果、着床率・臨床妊娠率・生児獲得率には差がないことがわかりました。
Wen-Jing Jiang, et al. J Ovarian Res. 2022 Mar 21;15(1):36. doi: 10.1186/s13048-022-00967-5.
エストロゲン長期投与の必要がないなら患者様負担を考えると少ない方が良いにきまっています。同様の検討をおこなったランダム化比較試験をご紹介いたします。

≪ポイント≫

HRT周期黄体補充前のエストロゲン補充が短いと、①排卵の恐れがないこと、②薬剤投与期間が短いこと、などのメリットがあり、基本生殖医療成績に大きな差がないことがわかりました。

≪論文紹介≫

Juliette Joly, et al. Hum Fertil (Camb). 2023 Jan 3:1-8. doi: 10.1080/14647273.2022.2163467.

HRT周期黄体補充前のエストロゲン補充は7日と14日の場合の生殖医療結果を比較したランダム化比較試験です。
HRT周期凍結融解胚移植は2018年10月から2021年1月に実施されました。160名をエストロゲン補充7日群80名とエストロゲン補充14日群80名に無作為に割り付けました。両群とも、黄体補充開始6日目に単一胚盤胞凍結融解胚移植を実施しました。主要評価項目は臨床妊娠率(7週)、副次評価項目は生化学的妊娠率(4w3d)、流産率、生児出生率、および胚移植の血清ホルモン値としました。
結果:
HRT周期黄体補充前のエストロゲン補充7日時点で子宮内膜厚6.5mm以上でした。患者160名をリクルートし、除外された患者を除いたエストロゲン補充7日群75名とエストロゲン補充14日群69名で検討しました。両群の患者背景は同等でした。生化学的妊娠率は7日群: 42.5%/14日群: 48.8%、生化学妊娠は7日群: 14.7%/14日群: 5.1%、7週目臨床的妊娠率は7日群: 36.3%/14日群: 46.3%、流産率は7日群: 13.8%/14日群: 8.1%、生児獲得率は7日群: 31.3%/14日群: 42.5%でした。全て統計的有意差は認めませんでした。
また胚移植日のホルモン値(血清LH、E2、P4値)も差がありませんでした。

≪私見≫

上記以外の論文でも、エストロゲン補充期間は生殖医療結果に大きな成績をもたらさないという報告が二報あります。エストロゲンは子宮内膜のPRなどの発現に影響を与えますが、内膜厚などのコンディションが整うのであれば大きな影響を及ぼさないかもしれません。

  • レトロスペクティブ研究 平均17日投与
    Sekhon L, et al. Fertil Steril. 2019;111:1177‐1185.e3.
  • レトロスペクティブ研究 平均20日投与
    Joly J, Goronflot T, et al. Hum Fertil (Camb). 2023:1–8.

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

亀田IVFクリニック幕張