PCOSと性機能の関係(Hum Reprod. 2023)

PCOS女性は性機能および性的満足度が低いとされていて、肥満、脱毛、多毛症、にきび、不妊症、不安、抑うつ、自信のなさが一因と考えられています。では、PCOSの高アンドロゲン血症が性機能および性的満足度と直接関連するかどうかを示した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

PCOS女性は、より多くの性機能障害と性的ストレスが報告されましたが、アンドロゲン値と性機能との相関はわずかしか認めませんでした。

≪論文紹介≫

2017年3月から2020年3月に、135名の女性(PCOS:68名、コントロール:67名)を対象とした観察的前向き症例対照研究です。18~40歳のPCOSの有無にかかわらず、合併症のない女性に対して、LC-MS法と性機能質問票を実施しました。
結果:
PCOS女性は、性機能(FSFI)が有意に低く(P<0.001、partial η2=0.104)、性的ストレス(FSDS-R)が高くなりました(P<0. 001、partial η2=0.090)、性機能障害(41.2% vs. 11.9%、P < 0.001)および臨床的性的ストレス(51.5% vs. 19.4%、P < 0.001)と一致していました。交絡因子で調整した回帰分析では、アンドロゲン濃度と性機能との関連はわずかであり、各モデルで説明できる性機能はmax 15%でした。
アンドロゲンとPCOS群では各項目とも有意な関連は認めませんでしたが、コントロール群では、①テストステロンとFSFI疼痛、②FAIとFSFI性的興奮、③アンドロステンジオンと臨床的性的ストレスに関係を認めました。
性機能は、6尺度(欲求、興奮、潤滑、オルガズム、満足、痛み)を含む19項目の女性性機能指数(FSFI)で評価しました。スコアが高いほど性機能が高いことを示し、合計スコア26.55点未満は性機能障害としています(ter Kuile, et al. 2006)。
性的ストレスは、13項目のFemale Sexual Distress Scale-Revised(FSDS-R)で評価しました。スコアが高いほど性的ストレスが強いことを示し、合計スコア15点以上は臨床的性的ストレスとしています(ter Kuile, et al. 2006)。

≪私見≫

メタアナリシスでは、PCOS女性における性機能の低下が示されており、主に興奮、潤滑、オルガズムに影響を及ぼしているとされています(Pastoor, et al. 2018) 。しかし、その後もPCOS女性における性機能に差がないと報告(Murgel, et al. 2019; Zhao, et al. 2019)、差があるという報告(Castelo-Branco and Naumova. 2020; Loh, et al. 2020)共に認めています。
患者様の妊活に対して、頭の片隅においておくことで円滑な外来診療につながる知識だと考えています。

文責:川井清考(院長)

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