新鮮胚移植(初期胚 vs. 胚盤胞)の周産期転機:英国(Fertil Steril. 2023)

新鮮胚移植を行う場合、単胎妊娠・出産の周産期転機(早産や出生体重)に対して、初期胚と胚盤胞で差があるかどうか調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

新鮮胚移植は胚を戻す時期によらず、出生体重や早産リスクなどは変わらなさそうです。

≪論文紹介≫

Nicola Marconi, et al.  Fertil Steril. 2023 Aug;120(2):312-320.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.04.018. 

イギリスの全不妊治療施設のデータベース(2012年-2018年: 60,926例)を用いて、初期胚と胚盤胞期胚の単胎妊娠・出産の周産期転帰を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は出生時週数と出生時体重としました。
結果:
胚盤胞群は42,677例、初期胚群は18,249例でした。新鮮胚盤胞移植と新鮮初期胚移植後の単胎妊娠・出産における早産(aRRR、1.07;95%CI、1.00-1.15)および超早産(aRRR、1.05;95%CI、0.91-1.21)リスクにはほとんど差がないと考えられました。低出生体重児(aRRR、1.02;95%CI、0.95-1.09)、超低出生体重児(aRRR、0.96;95%CI、0.83-1.11)、高出生体重児(aRRR、0.97;95%CI、0.90-1.04)、超高出生体重児(aRRR、0.91;95%CI、0.77-1.08)リスクも同様に差がありませんでした。

≪私見≫

Nicola Marconiは他にも新鮮胚移植の周産期転機に関しての報告を出しています。こうみると、高出生体重児は長期培養より凍結がリスク因子なのでしょうか。

Nicola Marconi, et al.Hum Reprod. 2019 Sep 29;34(9):1716-1725.
今回同様の1999年から2011年の英国における周産期データベースでは、新鮮胚盤胞移植と初期胚移植にて早産、低出生体重児/高出生体重児、先天異常リスク増加は認めていません。

Marconi N, et al. Hum Reprod Update. 2021; 28: 1-27
35件報告(520769単胎妊娠)新鮮胚盤胞移植では、新鮮初期胚移植と比較して、高出生体重児(RR 1.14;95%CI 1.05-1.24)および超早産(RR 1.17;95%CI1.08-1.26)リスク増加を認めました。

文責:川井清考(院長)

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