診療科・部門紹介 女性泌尿器・骨盤臓器再建外科外来

診療内容

女性泌尿器科・骨盤臓器再建外科外来では、骨盤臓器脱、膀胱損傷、尿管損傷、腹圧性尿失禁、尿管腟ろう、膀胱腟ろう、間質性膀胱炎などが対象になります。

1.骨盤臓器脱(Pelvic organ prolapse:POP)

(膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱など)

骨盤臓器とは
骨盤内にある臓器を指します。前から膀胱、子宮、直腸の順に並んでいます。
 

骨盤臓器脱とは
女性は男性の骨盤臓器と構造が違い、出産のため腟管があります。この腟管を介した各種臓器の脱出(ヘルニア)を骨盤臓器脱と呼びます。 膀胱が下垂すれば膀胱瘤、直腸が下垂すれば直腸瘤、子宮が下垂したものを子宮脱と呼びます。 直腸が肛門から飛び出すものを直腸脱と呼びます。 (図2)約70%が膀胱瘤であるため、頻尿症状、排尿困難や尿失禁などを伴いやすくなります。 そのため、膀胱瘤の治療は出ているものを治すだけでなく、排尿症状も同時に治療しなければなりません。 出ているものが治れば、排尿症状も良くなりますが、治療内容によっては排尿症状が残存したり、ひどくなることもあります。 このため排尿機能をしっかりと把握し治療することが重要です。
 

膀胱瘤が約70%

膀胱瘤にも尿道に近い部位にヘルニア門があるのか、膀胱の後ろ側にヘルニア門があるかによって排尿機能に影響します。
 

ヘルニア門の位置
骨盤臓器脱の原因:出産後や閉経後あるいは子宮摘除の後にもおこりやすくなります。
 
・出産後は出産の際に靱帯や筋膜がダメージを受けるため骨盤底の支持力が低下し骨盤臓器脱となります。
・閉経後は女性ホルモン(エストロゲンなど)の低下にともないコラーゲンやエラスチンといった支える機構が弱くなるために起こりやすくなります。

・子宮摘除のあとは、子宮を支えていた各靱帯や筋膜が切断されるため骨盤底の支持力が低下し起こりやすくなります。
 リスクファクター:多経産、肥満、高齢、慢性便秘、家族歴などが骨盤臓器脱の危険因子として知られます。
 症状:腟部の膨隆、頻尿、尿失禁、尿失禁、下腹部膨満感や圧迫感
・診断:標準的な問診表を用い症状分析を行います。
・内診:どの部位が下垂してくるのかを調べます。
・POP-Q:下垂の程度・部位を世界基準で計測します。
・尿流量測定:排尿状態を評価します。尿の勢いや排尿時間がわかります。
・残尿測定:排尿後しっかりと排尿ができているかどうか検査します。
・会陰エコー:陰部からエコーにて筋肉の状態や膀胱子宮直腸などに異常がないか検査します。
・膀胱鏡:細いカメラで尿道から膀胱を観察し、解剖学的な異常を調べます。
・骨盤MRI:筋肉、骨盤内臓器、骨盤底のサポート状況を評価します。また、膀胱の形態、子宮、卵巣などの異常がないか調べます。
・CT:骨盤臓器脱が他の病気が原因で起こってないか評価します。
※各検査はすべて行うものではありません。症状などにあわせて適切な検査をご提案します。

骨盤臓器脱の予防について
骨盤臓器脱は上記のようなリスクファクターによりますが、予防法はぜひ取り組んでいただきたい項目になります。 「骨盤底が弱い」→「弱い部位のサポート能力が破綻」→「脱」のメカニズムは理解しやすいと思います。 このため弱った部位を強化する運動として骨盤底筋体操がテレビや雑誌などでもよく紹介されています。 あるいは医師からも骨盤底筋体操を指示された方も多いのではないでしょうか。 「骨盤底を強化する運動」に着眼されてきましたが、骨盤底を強化する以外に、骨盤底に余計な力をかけないような日常生活を送ることが非常に大切です。 骨盤底をいくら鍛えてもそれ以上の力が加わってしまうと骨盤底は耐えられなくなります。
姿勢づくり、腹式呼吸、排便姿勢など多数の項目から骨盤底に負荷をかけないようトレーニングする方法はとても効果があります。
特に若い方には治療として、尿漏れ改善や下垂感が消失する方もたくさんいらっしゃいます。

骨盤臓器脱の治療方法
・骨盤底リハビリテーションで治療する
予防法をご参照ください。軽度の膀胱瘤などであれば骨盤底リハビリテーション※をお勧めします。

・ペッサリーで治療する
腟内に柔らかいリングと呼ばれる器具を挿入し、骨盤臓器の下垂を腟内で支える治療法です。ペッサリーによる管理は自己着脱(朝挿入し、夜抜去)の習得が必須と考えます。入れ歯やコンタクトレンズと同じように清潔を保つ必要があるからです。ペッサリーを長期に入れたままにすると、腟粘膜にびらんを起こしたり、帯下が増えたり、尿路感染症の原因になったりします。ペッサリーの自己着脱が可能な方は骨盤底リハビリテーションを同時に行うと効果的です。若い方は手術を選択する前にぜひトライして欲しいと思います。

・医療機器下着で治療する
フェミクッション®などは下着にクッションが付いたもので下垂を支えます。
https://urogyne.jp/lp_femicushion/

・手術で治療する
完全に脱出されている方や骨盤臓器脱治療後の再発などは積極的な治療になるかと思います。腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)、経腟メッシュ手術、ネイティブティッシュリペア(NTR)などを各個人の全身状態や病態に合わせて選択します。
 
LSCは腹腔鏡を用い、体の中から下垂部分をメッシュで支え、腰の靱帯に固定する治療法です。子宮の上半分を切除する方法が日本では一般的になりましたが、子宮を取らない(子宮を温存)する方法も選択肢のひとつです。 特に糖尿病や自己免疫疾患など易感染状態の方は子宮を取らない方法をお勧めします。 手術の有無にかかわらず骨盤底のリハビリテーションを受けていただくこともお勧めしています。
・ERAS(Enhanced Recovery After Surgery: 術後早期回復)プロトコールにより手術前から準備が始まり、手術後の全身状態の早期回復を目指します。尿道カテーテルが入らない、点滴が早く抜けるため、身体の制限が少なく術後早期の回復につながります。このため2泊3日~3泊4日の入院治療となります。
・ERASプロトコールを用いたLSCの評価を当院の3病棟計35名の看護師からの回答を示します。
病棟看護師は2泊3日、3泊4日の順に良いと回答しています。 術前管理、術後管理(疼痛対策、水分・食事、など)をはじめERASプロトコールを支持する回答であったと思います。 早期回復するためには手術の質も大事です。出血や手術時間が大きく術後の疲労回復につながりますので、長くても手術は3時間程度にしなければなりません。 また、理由のない子宮切除や附属器切除は侵襲度を加味する必要があります。

LSC治療スケジュール(例)
入院前:骨盤底リハビリテーションをお勧めします。
入院中:スケジュールを以下に示します。
退院後:骨盤底リハビリテーションを引き続き継続して頂きます。
スケジュールの調整が間に合わない場合は手術後受けて頂くと良いと思います。
 
  前日 手術日 術後
1日目~2日目 退院
特記事項
処置 14時入院
オリエンテーション
尿道カテーテルなし なし シャワー、入浴可
飲水
食事
制限なし 術後3時間~ 
飲水開始、飲食開始
制限なし 便秘しないように
安静度 制限なし 術後3時間~
自立歩行
トイレ
制限なし 1カ月間は腹圧をかけない。
1カ月後から夫婦生活
 

2.腹圧性尿失禁(Stress incontinence:SUI)

骨盤底筋と腹圧との協調性が悪く尿漏れに至る方が多く、骨盤底筋体操で改善される方も多くおられます。当院では骨盤底リハビリテーションプログラムをお勧めしています。
当科においても、手術の有無にかかわらずリハビリテーションを受けていただくことをお勧めしています。<
手術の場合は2泊3日で尿道スリング手術を行ないます。手術時間は約30分です。
 

3.尿道憩室・尿道周囲膿瘍

陰部のふくらみや、繰り返す膀胱炎などでなかなか診断に至らないケースも多く、治療ができる施設も少ないです。エコー、膀胱鏡、MRIなどで診断し尿道の周囲に溜まった膿瘍や憩室を切除します。
 

術前

術後
 

4.膀胱腟瘻

婦人科手術(子宮摘除)の術後に起こる合併症で、手術が終わり膀胱留置カテーテルを抜いた後から尿漏れの症状で診断されることが多いですが、2,3週間して症状が現れる場合もあります。小さな瘻孔であれば自然治癒することもまれにあります。
根治的には瘻孔を切除し、腟粘膜、膀胱粘膜筋層をそれぞれ縫合し閉鎖します。瘻孔の大きさや質によっては、お腹から大網充填や経腟的に大陰唇の脂肪を充填します。
 

5.尿管腟瘻・尿管閉塞・尿管損傷

婦人科・下部消化管外科術後に起こる合併症です。尿管が手術中になんらかの損傷を受けた事が原因となることが多いです。下部尿管が損傷を受けた場合は、尿管を膀胱に再度吻合する尿管膀胱新吻合術を施行し治療します。尿管ステントだけでは治癒することはまれで、尿管ステントによる尿路感染症などが問題になるため可能な限り修復されるとよいと考えます。
 

6.間質性膀胱炎

おしっこを貯めると痛みが出る病気で原因がわかっていない疾患です。慢性膀胱炎と診断され、抗生剤の処方を度々受けられている方は、鑑別にあげられる疾患です。
内服加療ではアレルギー反応を抑える薬剤や鎮痛剤などが用いられます。

手術療法:膀胱水圧拡張術
膀胱内注入療法: ジムソ膀胱内注入


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