ご来院の方へ FT(卵管鏡下卵管形成術:falloposcopic tuboplasty)

1.どんな手術なの?

近位卵管の高度の狭窄、閉塞病変を再開通させ一般治療(タイミング・人工授精)による妊娠率を改善させる手術です。

2.手術の適応

子宮卵管造影検査や子宮鏡下卵管通水検査で、片側あるいは両側の卵管閉塞、または高度の狭窄所見が近位に確認された場合が適応になります。
他院からの紹介状の持参した場合や他院画像を持参し当院で再度画像読影し上記診断にいたった場合は子宮卵管造影検査や子宮鏡下卵管通水検査を省略することができます。
遠位狭窄病変や卵管水腫病変には適応にはなりません。

3.手術を行う時期について

通常月経終了してから排卵日までの期間に行います。
月経様の出血があっても妊娠していることがあるため妊娠していないことの確認が必要です。手術までは避妊をしていただきます。

4.手術による妊娠率の改善 効果

FTによって、卵管を再開通させることができれば、それまで無効であっても、タイミング療法や人工授精による妊娠が十分に期待できます。これまでの報告では治療後2年間で約30-35%に妊娠が成立し、平均妊娠成立までの期間は、7-8 ヶ月です。
ただし、卵管障害の程度によっては、10%未満ですが、卵管の再開通ができない場合があったり、再開通に成功しても術後早期に卵管の再閉塞や再狭窄が生じる場合もあります。
卵管内の狭窄が解除されても、卵管内部の構造は元にもどらず機能が回復しないこともあります。観察所見によっては、短期間で高度生殖医療へのステップアップをお勧めする場合があります。

卵管の内部

卵管内部を硬性鏡でのぞいた所見/卵管鏡で観察した所見

※(Nakagawa K et al:A new evaluation score that uses salpingoscopy to reflect fallopian tube function in infertile women.Fertil Steril.2010より引用)

5.合併症

卵管に穴が開く卵管穿孔を起こすことがあります。卵管カテーテルは1mm程度を細く、穿孔が起きた場合もほとんどは待機観察で経過をみることができます。また長時間手術を行うと還流液で血液が希釈し水中毒を起こす事も考えられます。その他、性器出血、疼痛、感染などの合併症もあります。ここに書かれている合併症は起こる頻度は極めて低く、また起こった場合も経過観察になる場合がほとんどです。

6.実際の手順

手術時間は、両側でも約30〜40分です。
以下の手順の前に腟内の洗浄、消毒を行い、静脈麻酔を行います。

1 .当院では子宮の向き、大きさを確認するために先に子宮鏡を行います。
子宮鏡を行う事で卵管口の場所を同定し、その後のFT操作がスムーズに行うことができます。

2 .卵管鏡をセットしたFTカテーテルを子宮内に挿入し卵管鏡で卵管の入り口を確認します。

3 .卵管の入り口が確認できれば、その中にFTカテーテルのバルーンを挿入します。このバルーンを2-8気圧で加圧しながら閉塞・狭窄部位を押し広げていきます。

4 .障害部位を開通し、バルーンが伸び終わったところ(最大11cm)から、バルーンを引き戻しながら卵管内腔面を観察していきます。

卵管鏡がカテーテル内にある時:画面は緑色(バルーンの色)に見えます。
卵管鏡がカテーテル外(卵管内)にある時:画面は黄白色に見えます。
卵管拡張部位や腹腔内や卵管間膜内に入った際は光源にたいして視野が広くなるため画面は黒くなります。

5 .片側終わる事に超音波をおこない卵管の拡張がないかなど評価をおこないます。開通した直後の超音波を行う事で下図のような卵管水腫が見つかる事もあり、このような場合はステップアップが必要になります。

7.麻酔

当院では鎮痛剤と静脈麻酔の併用でFTを行っています。
使用する麻酔薬、鎮痛薬は以下の通りです。
静脈麻酔:プロポフォール、その他
鎮痛剤 :ボルタレン座薬、ペンタジン、ロピオン
麻酔の種類により日帰り手術、1泊2日入院手術など異なります。

8.FTをしない上の治療選択

卵管が閉塞している場合は卵と精子が出会っていないため両側閉塞症例であれば体外受精にステップアップすることをおすすめします。また片側の閉塞症例では反対側の卵管での妊娠症例もあります。
当院では内膜症の有無、年齢、卵巣予備能や狭窄の部位などから症例別に説明させていただき今後の治療方針をきめていきます。大きな卵管性不妊に対する治療方針は以下のとおりです。

9.看護師からの手術前後の注意事項

  1. 手術が決定した受診日に、手術当日の流れについて説明を致します。
  2. 手術は、静脈麻酔で施行され、眠っている間に手術は終了します。
  3. 帰宅時、麻酔が覚めきらないときがあるため自分で運転をしての来院は、避けて下さい。
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