ご来院の方へ ERA(エラ)検査
ERA (子宮内膜着床能) 検査とは?
ERA検査は、体外受精において良好な受精卵を複数回移植しても妊娠に至らない方へ行う検査です。
子宮内膜着床能とは、子宮内膜が受精卵を受け入れる状態のことを指し、受精卵が着床できる子宮内膜の受容可能な時期を「着床の窓: WOI」( window of implantation )と呼んでいます。
原因不明の反復着床不成功例ではこの「着床の窓」が最適な時期ではないことがあり、ERA検査では移植当日の子宮内膜が着床可能な状態にあるかどうかを遺伝子レベルで調べることができます。最適な移植の日を明らかにすることで着床の可能性を高める目的で行います。ERA検査は世界70カ国、1500を越えるクリニックで実施されており、ERA検査を受けられた患者様の30%近くが、「着床の窓」のタイミングがずれていたという結果が分かってきています。
ERA検査における当院の特徴
当院では、2018年にERA検査を開始し、100例以上の実績があります。ERA検査自体が新しい検査であり、一定の見解も得られておらず、解釈判断が難しいパターンもありますが、既にお子様が1人いらっしゃる方や、妊娠を経験していても実際にこの「着床の窓」がずれている方がいらっしゃいます。着床不全の原因の一つにすぎませんが、ERA検査を行った後の当院での移植成績の改善率等、現在分かっていることは詳しくご説明をさせていただきながら、様々なご提案ができるかと思います。
この検査はEMMA(子宮内膜マイクロバイオーム検査)・ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)も同時に行うこと可能ですが、現在のところ当院の治療方針としては強くは推奨しておりません。
ERA検査は遺伝子発現を確認する検査であり、目視での組織・細胞レベルでの確認はできません。当院の特徴として、採取した子宮内膜組織をデジタルパソロジーシステム(病理画像をデジタル情報として電子化し、モニター上に再現表示させたデジタル画像を用いて、病理診断等をおこなう技術)を用い、複数の病理専門医師による検体の適切さの評価、またALICE検査の代替となるCD138免疫染色による慢性子宮内膜炎の有無を同時に確認しており、検査結果に異常があった場合は、その妥当性を評価しております。
ERA検査の方法
検査の行われる周期は自然排卵周期とホルモン補充周期の2通りがありますが、当院では主にホルモン補充周期で行います。
凍結融解胚移植を行うホルモン補充周期と同じお薬を使用します。
- ERA検査周期では移植は行いません。
- 月経1-3日目から子宮内膜を厚くするためのエストロゲン製剤(卵胞ホルモン)を開始します(前周期のホルモン剤の使用などにより医師の指示で変更する場合もあります)。
- 月経12-16日目頃に内膜の厚さを確認します。
- 通常、胚盤胞はP+5(黄体補充開始日をP+0として実質投与後6日目になることが多いです。時間で管理するので心配は要りません)に子宮内に移植しますので、プロゲステロン製剤(黄体ホルモン)を開始してから5日後(120時間±6時間)に子宮内膜組織を採取します。組織の採取は5分程度です。
- 採取された検体はスペインにある検査会社Igenomix社に送られ、ERA検査が実施されます。検査結果が届くまでに通常3週間程度かかります。
ERA検査の対象となる患者さま
反復性胚着床障害、または高齢で健康な受精卵が極めて貴重な患者さまを対象としています。ホルモン補充周期での凍結融解胚移植に不向きな方もいらっしゃいますので、必ずしも全員に同じ治療方針は当てはまるわけではありませんが、当院では1-2回目で良好胚を戻しても着床しない場合は着床側の検査を行うことが治療成績を改善すると考えています。
検査の結果
着床の窓が以下のどこにあるかを、遺伝子発現プロファイルから判断します。
着床可能 | 容期 (Receptive) 受容期の初期(Early-Receptive)=黄体ホルモン開始を要調整 受容期の後期(Late-Receptive)=黄体ホルモン開始を要調整 |
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着床不適 | 受容期前(Pre-Receptive) =移植する時期を遅らせる必要あり 受容期後(Post-Receptive)=移植する時期を早める必要あり |
解析結果が受容期(Receptive)の場合、次周期以降、同条件のホルモン補充周期スケジュール(至適時間±3時間)での胚盤胞胚移植を行います。
解析結果が受容期初期(Early-Receptive)の場合、次周期以降、同条件のホルモン補充周期スケジュールよりも黄体ホルモン開始を12時間早めに行うことが推奨されています。
解析結果が受容期後期(Late-Receptive)の場合、次周期以降、同条件のホルモン補充周期スケジュールよりも黄体ホルモン開始を12時間遅く行うことが推奨されています。
解析結果が受容期前(Pre-Receptive)の場合、ERA検査での内膜採取が早すぎるため24時間以上検査時間より胚移植を行う時期を遅らせることが推奨されています。89%以上の確率で次回再検査を行うと一致することがわかっており、再検査は必要でないことがほとんどです。
解析結果が受容期後(Post-Receptive)の場合、ERA検査での内膜採取が遅すぎるため24時間以上検査時間より胚移植を行う時期を早めることが推奨されています。受容期後(Post-Receptive)の症例は世界的にみても、まだまだ症例数が少ないため新たな子宮内膜生検が推奨されています。再生検は今回の子宮内膜生検を行った日よりも24時間以上早く行います。
ERA検査の料金
当院で体外受精を行っている方 または紹介状持参の方 |
左記以外の方 | |
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ERA検査費用 | 130,000円 | 200,000円 |
- 上記には子宮内膜組織検査 免疫染色(CD138)内膜組織診も含みます
- 薬剤料、超音波などの検査料は別途必要となります
- 精密な結果を得るために再検査を行った場合は、90,000円となります
- 表示金額は税抜価格です
- 当院で治療を行なっていない方でも、かかりつけの体外受精施設から、現在までの移植方法やERA検査周期の情報提供をよりいただければ、130,000円(税別)でERA検査を行うことができます。ご不明な点はお電話でお問い合わせ下さい。