ご来院の方へ 子宮卵管造影(HSG:hysterosalpingography)
1.検査の内容、目的
子宮卵管造影検査(HSG)は造影剤を用いて子宮内腔の状態と卵管の通過性を調べる検査です。
当院で評価しているポイントは以下のとおりです。
- 子宮の内側の状態(子宮奇形など)
- 卵管の疎通性
- 卵管周囲の癒着の推測
2.検査適応
下記の患者様以外は誰でも受けて頂く事ができます。
- ヨードアレルギー、あるいはその疑いがある方
- 重篤な甲状腺疾患の方
- メトホルミン(グリコラン、メルビン)を内服している方
→当院では子宮鏡下通水検査をお勧めしております。 - 妊娠している可能性がある方
- クラミジア検査を行っていない方
→検査をおこなって妊娠、クラミジア感染がないことを確認してから検査をおこないます。
3.検査を行う時期について
通常月経終了してから排卵日までの期間に行います。
月経様の出血があっても妊娠していることがあるため妊娠していないことの確認が必要です。手術までは避妊をしていただきます。
4.検査による妊娠率の改善効果
あくまでHSGは検査であり、卵管を通す治療ではありません。
しかし原因不明の不妊症に対してHSGを行うことにより妊娠率が高くなるといわれています。
5.合併症
性器出血、疼痛、感染などの合併症があります。ここに書かれている合併症はおこる頻度は低く、また起こった場合も無治療で軽快することがほとんどです。
また造影剤を使用しますので下記の点の注意も必要です。
造影剤アレルギーについて
本検査ではヨード造影剤を使用しますので一定の頻度で次のような副作用が生じることが知られています。
- 軽い副作用:かゆみ、発疹、発赤、悪心、嘔吐
100人に1人以下の確率で起こりますが、特に治療を必要としないことが多いです。 - 重篤な副作用:息苦しさ、嗄声、血圧低下(ショック)、意識消失、腎不全
発生する頻度は、2.5万人に1人、入院のうえ治療が必要です。 - 遅発性副作用:頭痛、嘔気、かゆみ、発疹、咳、冷や汗、動悸
発生頻度は1000人に1人、検査後数時間から数日後に副作用が発生することがあります。
6.実際の検査
透視できるレントゲン室でおこないます。
仰向けになっていただき膣内の洗浄をおこないます。
- 子宮口から細い管(バルーンカテーテル)を入れて固定します。
- 造影剤を注入し、子宮内腔から卵管、腹腔内へ造影剤がながれていく状態を透視下(画像をリアルタイムで見ながら)に観察しレントゲン撮影します。
透視下で行う事により患者様の疼痛の程度を画像所見とあわせて判断し注入量や速度も調整していきます。(1)子宮内腔が造影されていきます。
(2)次に卵管がうつってきます。この患者様では左側の卵管が先に造影されてきています。(レントゲン写真は左右逆にうつっています。)
左右どちらの卵管が先に造影されるかは卵管の通りやすさだけに影響されるわけではなく、その際のカテーテルの向きや造影剤の注入速度などにも影響します。(3)両方の卵管がうつってきます。両方の卵管が腫れていない事、また卵管の先(卵管采)から腹腔内に造影剤がでていることを確認します。患者様の痛み具合ではここまで行く前に中断することもあります。
- バルーンカテーテルを抜いて腟内を洗浄します。
- 最後に拡散の状態を確認してレントゲン撮影し終わりになります。
7.麻酔
当院では無麻酔でおこなっております。もし鎮痛剤をご希望の場合はスタッフまで申し付け下さい。
8.HSGで異常があった場合
- 子宮内にポリープや子宮内癒着が疑われた場合
子宮鏡を行います。子宮鏡検査で診断がつき不妊の原因や貧血などの原因と判断した場合、手術の適当となります。 - 子宮奇形が疑われた場合
MRI検査を行い、どのような奇形かを判断します。 - 卵管の狭窄、閉塞病変がうたがわれた場合
場所によっては再度子宮鏡下通水試験をおこない、再評価を行うことがあります。
子宮に近い部位の病変では卵管鏡下卵管形成術(FT)、遠位部の病変では腹腔鏡下卵管形成術により治療することもあります。
しかし、物理的な狭窄は解除できても機能まで戻す事はできませんので、年齢や他の原因などを総合的に判断し体外受精治療にすすむことがあります。 - 卵管の拡張病変(卵管水腫)が疑われた場合
MRI検査を行い、卵管の状態を評価し手術治療の適当があるかどうか検討いたします。体外受精に移行した際高度の卵管水腫があると着床障害をおこすことがあります。そのため体外受精の反復不成功例の場合は卵管切除術や卵管結紮術を行います。
9.費用
HSGは健康保険適用です。
- 通常の撮影枚数は3~5枚で、別途、検査判断料・造影剤料等もあわせると約4,000円~5,000円程度(保険:3割負担)になります。
また、別途チューブ代として3,300円(税込)を申し受けます。 - 抗生剤が必要な場合、3日分投与で別途約600~700円(保険)がかかります。