ご来院の方へ 子宮鏡検査

1.検査の内容、目的

細い観察用の子宮鏡を使用して子宮内の状態や卵管の入り口の状態を観察します。
観察時間は通常5分〜10分ほどです。

2.検査を行う時期

通常月経が終わってから排卵日までに行います。
月経様の出血があっても妊娠していることがあるため、検査までは避妊が必要です。

3.検査による評価

子宮内宮正常
子宮内膜ポリープ
粘膜下筋腫
正常 卵管口
卵管狭窄
卵管閉塞

4.合併症、副作用

出血 出血があってもごく少量です。
感染 無菌操作で行いますが、操作が難しく感染の可能性のある場合には抗生物質を予防的に使用します。
疼痛 子宮鏡の刺激や子宮内部の圧が高まることで痛みを感じる場合があります。痛い時は圧を下げ、痛みが持続する場合には鎮痛剤を使用します。
また、子宮の入り口(頸管)が狭く、観察しづらい場合には鉗子で子宮の頸部を把持して子宮の向きを補正したり、金属の棒を頸管内に入れて頸管を拡張する可能性があります。
その場合は痛みを伴う場合があり、鎮痛剤を使用します。
子宮穿孔 細いファイバーで柔らかい素材のため、通常の観察で子宮を損傷することはありません。
水中毒 子宮内を環流する液体が卵管を通って腹腔内にとどまり、吸収されて血液が希釈され、電解質のバランスが崩れることです。短時間の観察で起こることは通常はありません。
気分の不快や徐脈 子宮の頸部が牽引や拡張で刺激された場合や、子宮内圧が上がった場合には反射で気分の不快や徐脈を訴えることがあります。通常は無治療で軽快しますが、薬を使用する場合もあります。

5.実際の検査

  • 手術室で行います。
  • 麻酔器や心電図計、酸素飽和度のモニターなど完備した清潔な部屋で行います。
  • 仰向けに寝た状態で検査を行います。検査を行う準備ができたら静脈麻酔をかけます。

1.検査開始

細く柔らかい子宮鏡(軟性鏡)を使用し、子宮内に滅菌した生理食塩水を流しながら検査を開始します。
この際、子宮の内圧が上がり、下腹部の違和感や痛みを感じることがあります。検査を続けることが難しい場合は、子宮内の水の量を調節するなどして対応いたします。
検査中何かあれば、すぐにお申し出ください。
まず子宮内を観察します。受精卵の着床を妨げるような病変(ポリープなど)がないかどうか確認します。

子宮内の様子(正常)

※画面上がお腹側、画面下が背中側になります。画面奥の方の二カ所のくぼんでいる部分(黒矢印)が卵管口のあたりです。

2.左右の卵管観察

次に左右の卵管を観察します。卵管入り口の通りが狭くないか(狭窄)、通りが閉じてしまっていないか(閉塞)を確認します。

黒矢印 卵管口

3.検査終了

検査終了です。
少し休んだ後に、外来診察室で検査結果をお伝えいたします。
異常があった場合は、「7.子宮鏡検査で異常があった場合」の流れとなります。

6.麻酔

当院では麻酔を使わず行います。鎮痛剤使用をご希望の方はスタッフへお申し出ください。

7.子宮鏡検査で異常があった場合

子宮内にポリープや筋腫を認めた場合
不妊の原因や貧血などの原因と判断した場合、子宮鏡下内膜ポリープ切除術の適応となります。

8.慢性子宮内膜炎について

子宮内膜炎は腹痛や発熱などを伴う「急性」子宮内膜炎と、臨床症状をほとんど認めない「慢性」子宮内膜炎に大きく分けられます。最近、慢性子宮内膜炎と不妊症・不育症との関係が注目されています。
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜間質への形質細胞の浸潤を特徴としています。子宮鏡検査を行い子宮内膜に異常所見(「マイクロポリープ」、「発赤」、「浮腫状肥厚」など)があった場合、内膜組織を生検しCD138免疫染色を行うことで子宮内膜間質に形質細胞がいるかどうかを調べます。

  • 免疫染色とは特定の“タンパク質”の存在する部位を抗体を用いて顕微鏡で見えるようにするための方法

治療

慢性子宮内膜炎の原因の一つとして細菌感染の影響が考えられており、抗生剤の内服により治療を行います。抗生剤の内服により子宮鏡の異常所見の改善、病理検査にて形質細胞が消失することが期待できます。治癒後、妊娠率の改善を認めたという報告がありますが、妊娠できる一般女性での慢性子宮内膜炎の罹患率がはっきりしないため検査や治療の明確な指針は今のところ定まっておりません。

当院では下記のような場合に、CD138免疫染色を行っています。

  1. 超音波検査から内膜不整や子宮内膜ポリープを疑って子宮鏡検査を行った際に慢性子宮内膜炎を疑う所見を認めた場合
  2. 良好胚を複数回移植しても妊娠に至らない場合
子宮内膜間質形質細胞(CD138免疫染色)
子宮鏡異常所見(発赤)
子宮鏡異常所見(浮腫状肥厚)
子宮鏡異常所見(マイクロポリープ)
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