黄体化未破裂卵胞(LUF)で一般不妊成績は低下する(論文紹介)

黄体化未破裂卵胞(LUF)について

定義:黄体化未破裂卵胞(LUF)症候群は、「通常排卵すべき発育卵胞が破裂しないで卵子の放出がないにも関わらず、未破裂卵胞がLHサージ作用で黄体化する排卵障害」と定義されています。あくまで卵子が放出されたかどうかは確かめようがないので、排卵前後で排卵すべき卵胞が超音波検査で縮小しないまま、プロゲステロン値が上昇する(基礎体温が上がる)症例をLUFと臨床現場では判断します。
LUFの発生率:正常妊娠可能女性の月経周期の5-10%に、不妊女性では発生率がもっと高いとされています。(Killick, et al. 1987、Marik, et al. 1978)。
LUFの起こりやすい症例:原因不明不妊、内分泌疾患、子宮内膜症、骨盤内癒着、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用、クエン酸クロミフェン(クロミッド®️)で上昇していることがわかっていますし、LUF症例は再発しやすいとされています。
その他:LUFは卵胞を形成する顆粒膜細胞の異常とも関連が報告されています。そのようなLUFとなった卵胞発育の特徴として、卵胞発育が遅い、LHサージ後に急激に卵胞発育を認める、LHサージ後に卵胞壁内の血流低下を認める、排卵後に黄体機能不全になりやすいとされています。

LUFに見えても卵子だけ出ているかも分からないよね?という意見が多々あると思います。クロミッド®を用いた人工授精でLUFになった症例の臨床成績を示した報告をご紹介します。

≪論文紹介≫

H Qublan, et al. Hum Reprod. 2006. DOI: 10.1093/humrep/del113

2004年9月から2005年7月にかけて原因不明不妊女性167名292周期に実施された前向き研究です。月経周期の5日目から9日目まで、クエン酸クロミフェン50-150mg/日内服し、卵胞は直径14mmになってからは毎日測定し、卵胞径が18mm以上になった時点で10,000 IUのHCG筋注し34〜40時間後に人工授精を実施しました。超音波検査は人工授精当日(0 日目)、その後 3 日間(1、2、3 日目)毎日行われました。
結果:
第1サイクルを受けた167周期中、42例(25%)がLUFを有していました。2周期目のIUI治療を受けた69名のLUF率は56.5%であり、そのうち33名は1周期目にLUFがあり、再発率は78.6%でした。連続3周期の治療を受けた56例では、LUF率は58.9%で、再発率は90%であった。LUF患者の妊娠は認めませんでした。

≪私見≫

LUFの一般不妊治療との関係は1980年から2000年前半の論文がほとんどです。
LUF症例をみたら、①再発しないかどうか調べること、②LUFを起こしやすいような病態がないかどうか精査すること、③妊娠しない場合は体外受精へのステップアップも検討すること、がポイントとなるのかと思います。

文責:川井清考(院長)

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