子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性の不妊/出産リスク(その2:論文紹介)

子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性の不妊/出産リスクのシステマティックレビューの続きです。子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性FSS 2,777 名(その後の妊娠 944 名を含む)を対象としており、「子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性の不妊/出産リスク(その1)」では不妊症について触れましたが、こちらでは再発率と周産期合併症について触れたいと思います。

≪妊娠中合併症のポイント≫

  • 手術方法による出産に至った割合に差は認めませんでした。
  • 早産率は経腹的広汎子宮頸部摘出術後が高い傾向にありました。
  • 妊娠中の合併症は絨毛膜羊膜炎が原因と考えられる前期破水、それに伴う早産が増加します。
  • 早産の予防的処置は一定のコンセンサスが得られていません。
  • 帝王切開は推奨されています。

≪論文紹介≫

Enrica Bentivegna, et al. Fertil Steril. 2016. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2016.06.032

再発率:
子宮頸がんの妊孕性温存手術の再発数は116件(円錐切除術または単純頸部摘出術: 4件、経腟的広汎子宮頸部摘出術後: 52件、経腹的広汎子宮頸部摘出術後: 28件、低侵襲手術による広汎子宮頸部摘出術後: 15件、術前補助化学療法後: 7件)でした。子宮頸がんの妊孕性温存手術の妊娠に至った割合、出産に至った割合、早産率はそれぞれ55%、70%、38%でした。手術による出産に至った割合に差は認めませんでした。早産率は経腹的広汎子宮頸部摘出術後が高い傾向にありました。
妊娠中合併症:
子宮頸がんの妊孕性温存手術後に妊娠した場合はハイリスクで妊娠となります。早産率は、妊孕性温存手術の方法によって39-57%でした。(経腹的広汎子宮頸部摘出術を受けた患者で早産率は高いですが、出産率には差がありませんでした。
どのような方法をとったとしても、胎児死亡は発生しています。原因として、おそらく子宮頸管の長さの短縮に関連していると考えられています。妊娠中期の早産には前期破水も関連していて、原因の大部分は潜在性もしくは臨床的な絨毛膜羊膜炎と報告されています。このリスクを減少させることを目的としたいくつかの処置や予防措置が報告されています。
その一つは頸部の縫縮術です。もともと頚部を摘出している例が多いのでさまざまな方法で子宮入口を縫縮することにより早産率を下げることができないか検討されています。妊娠中の定期的な超音波検査で切迫早産徴候を探りながら処置を考えるという方法も提案されています。
早産率を減らすために定期的な腟内pH測定、プロゲステロン腟剤の適用、細菌性腟炎に対するNugentスコアの測定、予防的抗生物質、ステロイド治療なども提案されていますが、標準化治療には至っていません。
経膣分娩後の大量出血などを予防するために、帝王切開は推奨されています。

≪私見≫

初期の子宮頸がんでは、円錐切除もしくは単純子宮頸部摘出術が行われていますが、他の術式にくらべて頸管狭窄などの術後合併症は少なく、頚管性不妊となるリスクは少ないとされています。定期的な子宮頸がん検診、HPVワクチン接種などを中長期的に啓発していく必要があると思います。
また、既に子宮頸がんの妊孕性温存手術を受けた女性に関しては、産婦人科腫瘍施設、生殖医療施設、高度周産期施設が連携をとりながら治療にあたることが大事であると思います。

文責:川井清考(院長)

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