タイミング法・人工授精法の成績

健康な男女が適切に夫婦生活をもった場合の周期あたりの妊娠率について、1996年Zinaman MJらは2周期目までは30%、3周期目は17%、徐々に減少して10周期目以降になると3%以下になると報告しています。また2003年Gnoth Cらは妊娠した女性310名を対象に妊娠するまでの期間を見てみると1、3、6ヶ月以内に全体で妊娠した夫婦の割合は42%、75%、88%となることを報告しています。
これらのことからも、結果が出る人は3-6ヶ月以内に妊娠していることがわかります。 もし、このデータが当院に通う患者さまにも当てはまるなら、タイミングや人工授精の治療を長く重ねることにより、比較的年齢が高い患者さまは体外受精の妊娠率が高い時期を逸脱してしまう可能性があります。
当院での2019年に妊娠された患者さまの妊娠までの治療回数をお示しします。ここで示すタイミング回数は避妊期間を除きます。また人工授精の回数はタイミングの以前の回数は考慮しておりません。タイミングで妊娠した患者さま267名中、3周期以内の割合が68.5%、6周期以内の割合が91.4%であり、人工授精で妊娠した171名中、3周期以内の割合が73.4%、6周期以内の割合が94.7%でした。
この結果を見ても、タイミング、人工授精をそれぞれ行った場合でも3~6周期ずつなのかなと最近思えるようになりました。もちろん年齢が高い方もいらっしゃいますが、妊娠群の女性の平均年齢は、タイミング法:31.8歳、人工授精法:32.9歳でした。

では、どのような方法で治療すると妊娠しているのでしょうか。
当院ではタイミング・人工授精では、多胎妊娠の予防のため基本は一つの卵胞を育てて治療を行っておりますので、比較的薬剤を使わないで治療をされている方も多くおります。3周期ほど結果が出ない場合は卵胞が複数個育たない程度に排卵誘発剤などを使用します。海外でも国内でも以前からゴナドトロピンなどの排卵誘発を行なった場合、人工授精の妊娠率が向上することが報告されております。またクロミッドなどによる排卵誘発は妊娠率向上につながるという報告と、つながらないという報告の両方が見られますので患者さまと相談しながら治療方針を決めていきます。
当院での結果は、タイミングの間はクロミッドやレトロゾールを使っても妊娠率には寄与していませんが、hCGを適正に使用することは妊娠成績を向上させています。また人工授精ではクロミッドやレトロゾールを使った方が、娠率が高くなっています。
これらのことを考えると夫婦の年齢、不妊原因にもよりますが、少なくとも通院をされてから遅くとも1年以内(タイミング3-6周期、人工授精3-6周期)には体外受精の検討が好ましいのではないかと考えています。

文責:川井(院長)

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