当院の採卵直後の凍結胚移植の基本方針(2021年4月現在)

採卵を実施した場合、私たちは症例を選んで新鮮胚移植を実施しています。新鮮胚移植は採卵ベースでいうと12%程度です。残りは凍結融解胚移植になるわけですが、翌周期すぐに移植をする場合はホルモン補充周期でおこなうことを勧めています。
理由としては、採卵直後に排卵周期凍結胚移植をトライしようとすると、採卵後の黄体遺残などにより月経周期を乱したり、妊娠成績が不安定になることが当院の結果として出たためです。2019年の第71回日本産科婦人科学会学術集会で報告した内容をご紹介したいと思います。
ご参考にしていただければ幸いです。

方法:
2015年1月から2019年2月までに、亀田総合病院・亀田IVFクリニック幕張で女性年齢が30歳以上40歳未満で初回採卵を行い、凍結融解単一胚盤胞移植を施行した214症例228周期を対象としました。クロミッド®️使用の有無、採卵から移植までの期間で、それぞれの臨床妊娠率を比較検討しました。
結果:
クロミッド使用採卵群は140周期(女性平均年齢は34.9歳)であり、クロミッド非使用採卵群は88周期(女性平均年齢は35.0歳)した。 クロミッド使用採卵群の翌周期・翌々周期の単一胚盤胞移植後臨床妊娠率はそれぞれ44.7%(21/47)、39.8%(37/93)でした。クロミッド非使用採卵群の翌周期・翌々周期の単一胚盤胞移植後臨床妊娠率はそれぞれ55.6%(15/27)、55.7%(34/61)でした。
考察および結論:
亀田総合病院・亀田IVFクリニック幕張ではクロミッド使用採卵群・クロミッド非使用採卵群ともに翌周期・翌々周期の臨床妊娠率に差を認めませんでした。
移植方法(ホルモン補充周期か排卵周期か) では、臨床妊娠率に有意差を認めませんでしたが、採卵翌周期ではホルモン補充周期の方が成績は良い結果となりました。
翌周期での移植では、前周期に hCG排卵周期投与の比率が高く胚受容能への影響が示唆されました(一部修正:データは改善なし)

≪私見≫

採卵後直後の周期に凍結融解胚移植をすることは全世界的に同意の方向でうごいていますが、あくまで大半がホルモン補充周期の場合を想定しています。
今後世界の動向として排卵周期凍結融解胚移植が増えてきた場合、よく周期の成績に影響をどの程度与えるかどうかはわかっていません。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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