取り違え防止策
体外受精において検体の取り違えは絶対に起こしてはなりません。当院では検体の取り違えを防ぐためART取違え防止システムを採用しています。体外受精のあらゆる工程にこのシステムを使用しておりますが、今回はその中の体外受精において卵子と精子を一緒に培養することで受精させる"媒精"を例に挙げてシステムの概要を説明します。ART取違え防止システムはWindowsパソコンに内蔵されており、このパソコンに接続されているカードリーダーで患者さんの診察券のID番号を読み取ることが出来ます。このID番号を夫婦として登録することで夫婦間情報として管理されています。当院で人工授精あるいは体外受精の経験のある方はリストバンドのバーコードを「ハンディリーダーで読取り→検体との照合」を経験されているかと思います。このリストバンドもART取違え防止システムから発行されています。
体外受精を行う前日に夫のバーコードシール(精子用)と妻のバーコードシール(卵子用)を印刷して、精子を保管するスピッツに夫のバーコードシールを、卵子を培養するディッシュに妻のバーコードシールを貼付します。精子を卵子が入っているディッシュに入れる(媒精をする)前に、それぞれのバーコードをハンディリーダーで読み込み、この精子と卵子の患者さんが夫婦であることを確認致します。夫婦であることが確認出来てのみ、媒精を行います。万が一、取り違えがあった場合、このバーコードのお二人は夫婦でない旨がハンディリーダーより知らされますので、違う検体同士を間違って媒精することは起こりません。
今回は媒精を例に挙げて説明しましたが、実際には精子・卵子・受精卵が培養される全てのディッシュ・スピッツにバーコードシールが貼られており、全工程においてバーコードの照合がなされております。ART取違え防止システムによる照合がなされなければ、次の工程に進めない様にしておりますので、検体をお預けになっている方達は検体の取り違えは絶対に起こらないと認識し、安心して頂ければと思います。
文責:平岡(培養室長)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。