ホルモン補充周期凍結融解胚移植のエストロゲン投与は漸増法?定常法?(論文紹介)

エストロゲン・プロゲステロンは受精卵が着床し、妊娠継続するうえで重要なホルモンです。体外受精は自然排卵に近づけることにゴールがあるわけではなく、体外受精に特化した方法で、どれくらい妊娠率を高め、流産率・周産期合併症を減らし、健常な出生児を模索し続けることが必要なんだと思っています。
現在は当然になりましたが、エストロゲン・プロゲステロンの外因投与による妊娠成立はまだまだ歴史が浅いです(Martins Wdeら、2006年)。プロゲステロン投与に関しては様々な薬剤が発売され議論にあがることが多いのですが、エストロゲンは、そこまでフォーカスされません。今回はエストロゲンの投与がどのような方法がよいのかを検討した論文をご紹介します。

S. Maderoら.Hum Reprod, 2016. DOI:10.1093/humrep/dew099

≪論文紹介≫

2010年10月から2015年3月までに、顕微授精後の胚移植8362例(患者8254症例)を含む後方視的な調査です。合計 5593 人(66.9%)の患者がエストロゲン漸増投与、2769 人(33.1%)の患者がエストロゲン定常投与を受けました。顕微授精を用いて受精卵を準備し、ほとんどの症例は分割期胚で月経周期12-14日目に移植しています。
エストロゲンの漸増法・定常法以外にも経口・経皮投与の違いなども生化学妊娠・臨床妊娠・流産率などと単変量および多変量解析によって分析しています。
結果:
経口投与(33.0対32.5%、P = 0.81)と経皮投与(35.3対33.5%、P = 0.33)では、定常法と漸増法の間で出生率に差は見られませんでした。経口投与では生化学的妊娠率は定常法が漸増法よりも高くなりました(53.7対47.5%、P <0.001)。調整後の分析では、経皮投与よりも経口投与の方が生化学的妊娠率に大きな影響を与えることが確認された(オッズ比(OR)1.28;95%信頼区間(CI)1.11~=8、P = 0.001、OR 1.13;95%CI 1.00~1.30、P = 0.055)。エストロゲン補充の 12 日目と 15 日目の間の胚移植のサブ解析では、妊娠転帰において 定常法 と 漸増法 の間に差は認められませんでした。

ホルモン補充周期の方法
前の周期に84.2%の患者がGnRHアゴニストで下垂体抑制を行なっています。
①エストロゲンの漸増法
経口:月経周期1日目から7日目まで2mg/日、8日目から12日目まで4mg/日、13日目から胚移植まで6mg/日
経皮:月経周期1日目と3日目に75mg、7日目から胚移植まで3日ごとに150mgの経皮吸収型パッチ(50mgの経皮吸収型パッチしかなかったイタリアで1日目に50mg、3日目に100mg、7日目から胚移植まで150mgを投与)
②エストロゲンの定常法
経口:経口エストロゲン6mg/日
経皮: 1日目から胚移植日まで3日ごとに150mgの用量

黄体補充は400mg/日のウトロゲスタン膣用カプセルもしくは12時間毎のワンクリノンとしています。補充は妊娠した場合10週まで実施しています。

≪私見≫

当院では経皮投与が定常法、経口投与は漸増法・定常法です。
この論文との違いは当院の方が 圧倒的にエストロゲン投与量が少ないこと、月経1日目からのエストロゲン投与開始がないことです(内膜が薄くなっているのを確認してからの投与になります)。生化学的妊娠率は、経口投与では定常法の方が漸増法よりも高くなりました
その国々で使用できるエストロゲン・プロゲステロン製剤も異なってきますし、患者特性(人種やBMIなど)も異なります。国内・海外共にホルモン補充周期下凍結融解胚移植について講演する機会を数多くいただいておりますので、もう一段階掘り下げた当院データでの解析を行ってみたいと思っています。

文責:川井(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

亀田IVFクリニック幕張