経口GnRHアンタゴニスト(エラゴリクス)を用いた卵巣刺激(F S Rep. 2024)

【はじめに】

調節卵巣刺激のLH抑制には①GnRHアゴニスト製剤、②GnRHアンタゴニスト製剤、③クロミフェンの抗エストロゲン作用、④プロゲスチン製剤などがあります。GnRHアンタゴニスト製剤は注射がメインでしたが最近では経口薬(エラゴリクスやレルゴリクス)が発売されています。経口薬(エラゴリクスやレルゴリクス)は筋腫・内膜症の臨床症状改善目的に使用されていて、今後として調節卵巣刺激において注射剤と同等の生殖医療結果に着地できるかどうかが課題となっています。経口GnRHアンタゴニスト(エラゴリクス)を用いた卵巣刺激の報告をご紹介いたします。

【ポイント】

経口GnRHアンタゴニスト(エラゴリクス)は、注射薬(ガニレリクス)と比較して、胚発育および臨床成績に関して同等の効果を示し、より低侵襲で費用対効果の高い選択肢となる可能性があります。

【引用文献】

David Soliman, et al. F S Rep. 2024 Jul 4;5(4):356-362. doi: 10.1016/j.xfre.2024.06.006.

【論文内容】

調節卵巣刺激のLH抑制に経口GnRHアンタゴニスト(エラゴリクス:E)と注射用GnRHアンタゴニスト(ガニレリクス:G)の治療成績を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
カナダ生殖医療施設で調節卵巣刺激のLH抑制にEまたはGを投与された194名の不妊患者を対象としました。主要評価項目は生化学的妊娠率、妊娠継続率、周期キャンセル率としました。副次的評価項目として、流産率、受精率、胚盤胞到達率としました。
結果:
両群は患者背景(年齢、BMI、ホルモン値、ゴナドトロピン総投与量、回収卵子数、移植胚数)に差はありませんでした。周期キャンセル率はE 7.0%、G 4.9%であり差はありませんでした。凍結融解胚移植において、生化学的妊娠率、妊娠継続率、流産率はEでそれぞれ74.5%、51.0%、31.6%、Gでは55.9%、39.8%、28.8%でした(生化学的妊娠率はEが高い)。新鮮胚移植に関しては、生化学的妊娠率、着床継続率、流産率はEでそれぞれ33.3%、33.3%、0.0%、Gでは37.5%、25.0%、33.3%で差は認めませんでした。

【私見】

生化学的妊娠率においてエラゴリクス群が高かったのは、PCOSや卵管不妊患者がエラゴリクス群に多かったことが起因しているのではないかと記載されています。
費用対効果も注射をうたない意味でも経口GnRHアンタゴニスト選択は、「患者に優しい」アプローチであり、PPOS法と比べて新鮮胚移植の可能性もあることから今後も主流になりうる治療選択かもしれません。

国内で流通しているレルゴリクスとエラゴリクスの違いです。こういうとき生成AIは便利ですね。

半減期
- エラゴリクス: 約4-6時間と比較的短く、1日2回の投与が必要です
- レルゴリクス: 約60時間と長く、1日1回の投与で十分です
結合親和性
- エラゴリクス: GnRH受容体への結合親和性は中程度
- レルゴリクス: GnRH受容体への結合親和性は非常に高く、エラゴリクスより約4倍強力とされています

用量と投与頻度
- エラゴリクス: 子宮内膜症治療では150mg 1日1回または200mg 1日2回
- レルゴリクス: 子宮筋腫治療では40mg 1日1回
LH・FSH・テストステロン/エストラジオール抑制効果
- エラゴリクス: 中〜高用量で効果的ですが、抑制が不完全な場合があります
- レルゴリクス: より迅速かつ強力な抑制効果を示し、性ホルモン値をより確実に抑制します
抑制効果の回復
- エラゴリクス: 最終投与から24-48時間でゴナドトロピンレベルが回復開始
- レルゴリクス: 半減期が長いため、抑制効果の回復にやや時間がかかる傾向

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文責:川井清考(院長)

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