新鮮胚移植とfreeze-all without PGT戦略の比較:後方視的コホート研究(F S Rep. 2024)

体外受精の最近の傾向として「全胚凍結戦略(freeze-all strategy)」が主流になってきています。もともと、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を回避するために行われていましたが、卵巣刺激による早期プロゲステロン上昇による新鮮胚移植による着床阻害効果の回避、高エストラジオール値に関連する新鮮胚移植後の有害な周産期合併症の懸念、異所性妊娠リスクの低下などからPGTを実施しなくてもfreeze-all strategyを選択されるケースが多いです。新鮮胚移植とfreeze-all後胚移植(それぞれ胚盤胞移植)を行う場合の出生率を調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

PGT-A非実施例において、新鮮胚移植は凍結胚移植と同等の生産率を示しました。 過去の3RCTも同様の結果となっています。

≪引用文献≫

Pavlovic ZJ, et al. F S Rep 2024. doi: 10.1016/j.xfre.2024.09.003

≪論文内容≫

2015年1月から2020年12月に、PGT-A非実施の初回単一胚盤胞移植8,319周期を解析しました。新鮮胚移植6,755周期と全胚凍結後の凍結胚移植1,564周期を比較検討しました。主要評価項目は生児出生率で、副次評価項目は妊娠反応陽性率、臨床的妊娠率、流産率としました。
結果:
年齢、BMI、AFC、基礎FSH、トリガー時/最終内膜チェック時のプロゲステロン値、IVF刺激時のピークE2値、採卵数、原因疾患で調整した結果、新鮮胚移植群と凍結胚移植群で生児出生率に有意差は認められませんでした(43.9% vs 45.9%)。
この結果は35歳未満、35-37歳、38-40歳、40歳超の各年齢層でも同様でした。
また、新鮮胚移植においてE2値4,000 pg/mL未満、4,000-4,999 pg/mL、5,000 pg/mL以上の各群でも、凍結胚移植と比較して生産率に有意差は認められませんでした。

≪私見≫

最近の3つのランダム化比較試験の結果でも、PGT-A非実施例における新鮮胚移植と全胚凍結後の凍結胚移植で生産率に有意差は認められていません。
Maheshwari A, et al. Hum Reprod 2022;37:476–87.:619症例
Wong KM, et al. Hum Reprod 2021;36:998–1006.:204症例
Stormlund S, et al. Br Med J 2020;370:m2519.:460症例

ただ、当院の成績をみていると胚盤胞異色にかぎっても凍結胚移植のほうが新鮮胚移植より高くfreeze-all strategyになってしまう傾向があります。人種差なのか、なにが原因なのか本当にずっと謎です。

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文責:川井清考(院長)

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