子宮腺筋症患者の体外受精前GnRHアゴニスト療法の有効性:メタアナリシス(J Assist Reprod Genet. 2024)
子宮腺筋症はIVF後の妊娠率低下や流産率上昇と関連することが報告されています。GnRHアゴニスト療法(目安:3~6か月間)を行うことで、子宮腺筋症による子宮の肥大や慢性炎症を抑制し、着床環境を改善することで、IVFの成功率を向上させると考えられています。ただし、体外受精前GnRHアゴニスト療法によりtime to live birthが遅れてしまうことも考えられ、生殖関連予後の軽度の上昇であれば、どのような治療を優先するかは医師・患者間での話し合いによって決定していきます。子宮腺筋症患者の体外受精前GnRHアゴニスト療法の有効性を示したメタアナリシスをご紹介いたします。
≪ポイント≫
子宮腺筋症不妊患者に対するIVF前GnRHアゴニスト療法は、新鮮胚移植において臨床的妊娠率を改善しますが、出生率では改善傾向が乏しくなります。凍結胚移植では今回のシステマティックレビューでは臨床的妊娠率の軽微な改善傾向のみで明確な有効性は認められませんでした。
≪引用論文≫
Galati G, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. doi:10.1007/s10815-024-03323-2
子宮腺筋症を有する不妊患者において、体外受精前GnRHアゴニスト療法が治療成績を改善するかを評価することを目的としたシステマティックレビューとメタアナリシスです。EMBASE、PubMed、Cochraneを用いて文献検索を行いました。評価項目は臨床的妊娠率、生児出生率、流産率としました。新鮮胚移植だけではなく、凍結胚移植前に同様の処理をした場合での成績も調査しました。
結果:
10の研究が解析対象となる7,511名の患者が含まれました
新鮮胚移植での成績:
臨床的妊娠率:有意に改善(OR 1.49, 95% CI 1.15-1.92, p=0.002)
出生率:改善傾向はあるものの有意差なし(OR 1.27, 95% CI 0.83-1.96, p=0.27)
流産率:差なし(OR 0.88, 95% CI 0.63-1.22, p=0.44)
凍結融解胚移植での成績:
臨床的妊娠率:改善傾向はあるものの有意差なし(OR 1.34, 95% CI 0.70-2.55)
出生率:有意差なし(OR 0.69, 95% CI 0.34-1.43, p=0.32)
流産率:有意差なし(OR 1.44, 95% CI 0.56-3.70, p=0.45)
≪私見≫
子宮腺筋症患者に対する体外受精前のGnRHアゴニスト療法の有効性を示す重要なエビデンスです。特に新鮮胚移植において臨床妊娠率の改善が認められた点は、実臨床での応用が期待できます。しかし、9つの後ろ向き研究と1つの前向き研究というデザインの限界や、生産率・流産率での有意差が示されなかった点から、より質の高いRCTによる検証も今後必要と考えられます。
今回のシステマティックレビューでのGnRHアゴニスト投与期間は、新鮮胚移植前:1-6ヶ月間、凍結胚移植前:1-3ヶ月間でした。
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文責:川井清考(院長)
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