modified Ferriman-Gallwey法による多毛症スコア(Fertil Steril. 2010)

2024年PCOS診断基準では臨床的アンドロゲン過剰症が診断項目にはいってきました。多毛症評価に使用されるのが、modified Ferriman-Gallwey法です。
多毛症の診断には3ヶ月間脱毛を中断した方法で評価するとされていますが、なかなか非現実的です。患者評価と医師による評価に差が生まれるか、生化学的アンドロゲン過剰症と臨床的アンドロゲン過剰症の相関があるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。

≪ポイント≫

患者評価と医師評価はmodified Ferriman-Gallwey法のスコアには相関がありました。modified Ferriman-Gallwey法のスコアと生化学的アンドロゲン過剰症の関連を示したのは医師評価の場合のみでした。

≪論文紹介≫

Juan J Espinós, et al. Fertil Steril. 2010 Dec;94(7):2815-6. doi: 10.1016/j.fertnstert.2010.05.022.

日常診療で受診する女性患者で、脱毛を中断していない患者の多毛症について、臨床医と患者の自己評価に相関関係があるかどうかを評価すること、生化学的アンドロゲン過剰症と多毛症の程度との関連性を評価することを目的とした横断研究です。
2009年1月から12月に、スペインの2つの婦人科内分泌科で多毛症・PCOSと診断された女性患者68名が研究対象としました。
modified Ferriman-Gallwey法(mFG法)を使用した多毛症の視覚的スコアリングは、患者と臨床医が同時に行いました。そのほか、BMI、腹部周囲長、ウエストヒップ比、total testosterone、SHBG、TFI、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステンジオン、空腹時インスリン値、グルコース、Quicky指数。Power analysisでは、文献で報告されているmFG法の10%に相当する2ポイントの差を想定したところ、サンプルサイズは63名となりました。
mFG法は合計スコアと、特にアンドロゲン感受性の高い部位(唇、あご、胸、下腹部、仙腸部)のスコアを算出しました。
結果:
mFG法を使用して患者自身が評価した多毛症の平均(標準偏差)スコアは15.1(6.8)に対し、臨床医による評価では12.0(4.4)でした(P=0.01)。患者自身のつけたスコアと臨床医のつけたスコアには相関関係が認められました(r = 0.502、P < 0.007)。
アンドロゲン感受性の高い部位(唇、あご、胸、下腹部、仙腸部)のスコアでは、患者自身のつけたアは臨床医のつけたスコアよりも高く(9.4 [4.0] vs. 8.1 [2.7]; P=.04)、より強い相関関係が認められました(r = 0.599、P < 0.001)。
ロジスティック回帰分析では、臨床医による多毛症のmFGスコアはBMIおよびTFIと関連を示しましたが、患者による多毛症mFGスコアは生化学的アンドロゲン評価項目のいずれとも関連しませんでした。

≪私見≫

臨床的多毛症の患者評価だけではなく臨床医による評価のみが、高アンドロゲン血症の生化学的パラメータと関連していたという事実は、患者自身が多毛症の程度を過大評価する傾向があることを示唆しているのだと著者らも考えているようです。
mFG法を用いた患者自身の自己評価は臨床的に有用ではなく、おそらくPCOS患者における臨床的多毛症の診断増加の原因となっている可能性があるとしていますが、私たちは国内のデータを調査して補正していけばよいだけの話だと思っています。過去の方法を踏襲するだけではなく次の改訂に向けてしっかりしたデータ収集をおこなっていくことが必要なのだと考えています。

多嚢胞性卵巣症候群の診断基準
(日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会, 2024)
以下の1-3の全てを満たすものを多嚢胞性卵巣症候群とする
①月経周期異常 ②多嚢胞卵巣 または AMH高値 ③アンドロゲン過剰症 または LH高値
アンドロゲン過剰症状は、血中アンドロゲン高値またはアンドロゲン過剰症状で判定する。血中アンドロゲンの測定には総テストステロンを用い、測定系の基準範囲上限で判定する。アンドロゲン過剰症状は男性型多毛を用い、modified Ferriman-Gallweyスコア≧6と多毛有りとする。

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文責:川井清考(院長)

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