MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法の比較(Fertil Steril. 2024)

MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法の比較した報告をご紹介します。

≪ポイント≫

全胚凍結を前提とした場合、MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法は生殖医療成績に差がなく、通院回数・注射回数・費用の面でPPOS法が、ベネフィットが高い可能性があります。

≪論文紹介≫

Annalyn M Welp, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):806-813. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.026.

2020~2023年に不妊治療として自家体外受精(IVF)を受ける18~44歳の全診断の患者と対象としてMPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法を比較した単生殖医療施設で行われたコホート試験です。評価項目は早発排卵率、回収卵子数および有効胚数、胚質、妊娠率、様々なベネフィットとしました。
結果:
MPAを用いたPPOS法を受けた418名(MPA群)についてプロスペクティブデータを収集し、419名の過去のGnRHアンタゴニスト法を実施した患者群(コントロール群)と比較した。年齢は群間で同程度でした(35.6±4.6歳 vs 35.7±4.8歳;P = 0.75)。早発排卵はMPA群では0例であったのに対し、コントロール群では5例でした(0% vs. 1.2%;RR=0.09;95%CI、0.01、1.66)。回収卵子数(14.3±10.2個 vs. 14.3±9.7個;P = 0.83)、胚盤胞数(4.9±4.6個  vs. 5.0±4.6個;P = 0.89)、または正常核型胚盤胞数(2.4±2.6個 vs. 2.2±2.4個;P = 0.18)は、MPA群とコントロール群でそれぞれ差は認められませんでした。臨床的妊娠率は同程度でした(70.4% vs. 64.2%;RR=0.92;95%CI、0.72、1.18)。卵巣刺激期間や総FSH投与量に差は認めませんでした。MPA群では、薬剤費が平均491±119ドル節約され、モニタリングの回数が平均1回少なく(4.4±0.9 vs. 5.6±1.1;P<.01)、1周期あたりの注射回数が5.0±1.2回少なくなりました。年齢と卵巣予備能で調整した場合、移植可能胚の有無に影響を及ぼしませんでした(76.6% vs. 73.4%;aRR=1.05;95%CI、0.94、1.14)。

FSH1日投与量は400単位前後であり、国内投与量よりやや多い設定となっています。PPOSのMPA量は10mg/日、GnRHアンタゴニスト法のアンタゴニスト開始時期は血清E2 400pg/mlもしくは主席発育卵胞が12-14mmになった場合のflexible法としています。

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文責:川井清考(院長)

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