ARTによる二絨毛膜二羊膜双胎の周産期リスク(J Assist Reprod Genet. 2024)

体外受精の保険診療が始まり、胚移植回数が年齢によって定まってから複数胚移植の希望が増えている印象を受けます。結果として双胎となる割合が増えます。患者様の妊娠・出産をしたいという不妊クリニックにきた目的を叶えるためには費用的にも時間的にも合理的な判断を思うかもしれませんが、妊娠後は様々な合併症がおこり得ます。二絨毛膜二羊膜双胎妊娠の周産期リスクをART妊娠と自然妊娠で比較したメタアナリシスをご紹介いたします。

≪ポイント≫

二絨毛膜二羊膜双胎妊娠の周産期合併症は、ART妊娠のほうが自然妊娠の場合より高いことがわかりました。

≪論文紹介≫

Li Chen, et al. J Assist Reprod Genet. 2024 Mar;41(3):581-589. doi: 10.1007/s10815-024-03035-7.

PubMed、Embase、Scopus、およびCochrane Libraryの電子データベースを、2003年から2023年までを対象としました。二絨毛膜二羊膜双胎の周産期リスクをART妊娠・自然妊娠で比較した報告を対象としました。
結果:
10,485名の二絨毛膜二羊膜双胎妊娠女性を含む18コホート研究を解析しました。
メタアナリシスの結果、ART妊娠は自然妊娠による二絨毛膜二羊膜双胎妊娠に比べ、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前置胎盤、常位胎盤早期剥離、分娩後大量出血、選択的帝王切開術および緊急帝王切開術のリスクが高いことがわかりました。また、呼吸窮迫症候群(RDS)と先天障害児のリスクは、自然妊娠群と比較して、ART妊娠群ではわずかに高いことがわかりました。

≪私見≫

ARTにおけるDDtwin 6420症例と自然妊娠におけるDDtwin 13650症例を含む15コホート研究の先行研究では、前置胎盤(RR=2.99、95%CI 1.51-5.92;I(2)=0)、早産(RR = 1.13, 95% CI 1.00-1.29; I(2) = 75%)、低出生体重児(RR=1.11、95%CI 1.00-1.23;I(2)=61%)、先天奇形(RR=1.26、95%CI 1.09-1.46;I(2)=26%)がART群で高くなっていることを報告しています。選択的帝王切開率は増加し(RR = 1.79, 95%CI 1.49-2.16; I(2) = 60%)、緊急帝王切開率は同程度であったとしています。少し結果が異なるのは新しい研究が7本追加されているのが理由かもしれません。
また、ART手技もPGT、凍結融解移植、胚盤胞移植と徐々に主流が変化しているため、影響を受けている可能性もあります。
今後も注視してみていきたいですね。

今回のデータのRRを記載しておきます。サプリメントにも詳しく記載されています。

HDP(RR, 1.54; I2 = 68%)
妊娠糖尿病(RR, 1.49; I2 = 58%)
前置胎盤(RR, 2. 21;I2=0%)
常位胎盤早期剥離(RR、2.05;I2=0%)
分娩後出血(RR、1.36;I2=0%)
選択的帝王切開(RR、1.13;I2=84%)
緊急帝王切開(RR、1.12;I2=0%)
PROM(RR, 1.01; I2 = 27%)
早産(RR, 0.95; I2 = 80%)
32週前の早産(RR, 1. 35;I2=82%)
低出生体重児(RR、1.09;I=87%)
SGA児(RR、0.73;I2=89%)
周産期死亡(RR、0.77;I2=83%)
先天奇形(RR、1.67;I2=57%)
呼吸窮迫症候群(RR、1.20;I2=53%)
NICU入室(RR、1.17;I2=87%)

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文責:川井清考(院長)

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