PPOSはトリガー後時間を伸ばした方がよい?(Reprod Biomed Online. 2023)

PPOS周期はトリガー後の時間が短いと回収卵子数の成熟率が低下するとする報告があります(Shen X.,et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2019)。ただし、この報告は発育卵胞数の数によりトリガー時間後の採卵時間にバイアスがありました。 Baris Ataらは「PPOSはGnRHアンタゴニスト法と基本同等」と考えているグループです。そちらのグループからのトリガー時間後の成熟率はPPOSもGnRHアンタゴニスト法も差がないとする報告をご紹介いたします。

≪論文紹介≫

Baris Ata., et al. Reprod Biomed Online. 2023 Oct 19;48(2):103626. doi: 10.1016/j.rbmo.2023.103626.

PPOSもGnRHアンタゴニスト法で卵子成熟率に差があるかどうかを調査したレトロスペクティブコホート研究です。女性年齢、ゴナドトロピンの種類(rFSHまたはHMG)、トリガーの種類(hCGまたはGnRHアゴニスト)、トリガーからの時間、刺激日数を独立変数とする線形混合効果多変量回帰分析で解析しました。卵子成熟率はMII卵子数/回収卵子数と定義しました。
結果:
GnRHアンタゴニスト473周期およびPPOS205周期(conventional: 121、flexible: 84)を解析しました。女性年齢の中央値(四分位)は36歳(32-40歳)でした。493周期はhCGトリガー、185周期はGnRHアゴニストトリガーでした。トリガー後時間は33.6〜39.1時間で、中央値(四分位)は36.2(36〜36.4)時間でした。成熟率はconventional PPOS、flexible PPOS、GnRHアンタゴニスト間で同様でした(中央値それぞれ80%、75%、75%、P = 0.15)。

≪私見≫

Baris Ataらのグループは下記の報告もしています。使う製剤に依存するより、トリガー時の血中LHやP4などの状況に影響をうけるのではないかと考えています。

・PPOS 23周期とGnRHアンタゴニスト22周期にてゴナドトロピン受容体発現、ゴナドトロピン反応、および顆粒膜細胞のステロイド生成に差を認めない。
Esmaeilian Y., et al.Reprod Biomed Online. 2023; 47: 14-15 doi: 10.1016/j.rbmo.2023.103455

メタアナリシスにてPPOSまたはGnRHアゴニストでは回収卵子数および成熟卵子数に差がない。
Baris Ata., et al. Hum Reprod Update. 2021 Jan 4;27(1):48-66. doi: 10.1093/humupd/dmaa040.

文責:川井清考(院長)

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